今こそ総合的なエネルギービジョンの大転換を

国会・国政

 

11月24日、第1回「立憲国際カフェ」が開催されました。
ドイツのクラウス・フィーツェ公使をお招きし、「ベルリンの壁崩壊後30年を経たドイツの内政課題」として、主に移民受け入れの課題と対策、気候変動対策&エネルギー政策ついてお話いただきました。

 

フィーツェ公使は1963年に東ベルリンに生まれ、東ドイツで育った方です。
1995年から99年まで日本で領事を務められた後、日本大使館広報部長、中国大使館政務部長などを歴任され、現在は首席公使・政務部長として活躍されています。

 

今、世界はエネルギーシステムの変革の時ですが、ドイツの他に類を見ない転換のスピードと規模は、世界から注目を集め議論の的となっています。
一方、日本を見てみれば政治がエネルギーシステムの転換戦略を大きく間違えてきたため、世界からみれば何周も送れてしまい、大変残念な事態に陥っているといっても過言ではありません。

私も10年以上前から取り組んできた大きなテーマのひとつです。

 

日本と世界の2009年を振り返る
2009年2月、オバマ政権が誕生した際、アメリカは7870億ドル規模で米国再生・再投資法案(ARRA)を設立しました。
その中で、スマートグリッド関連で総額110億ドル、このうち関連補助金が45億ドルでした。

 

これには3倍規模の応募があり、中身はスマートメーターの増設(34億ドル)、配電自動化など流通設備の補強(6億ドル)、その他6億ドルはバッテリーによる再生可能エネルギー制御、マイクログリッド、ローカルなネットワークを構築し再生可能なエネルギーを含め独立運営などでした。

 

この時の応募者のほとんどは電力会社ですが、そこに技術やシステムを提供するベンチャー、IT企業、電機メーカー大小企業入り乱れての提供合戦の様相ということです。

 

・アメリカの場合
スマートグリッドの実現、普及に書かせない考え方の最重要ポイントは、次世代基本インフラ分野での標準化を握ることです。
これが国際競争力の観点で最も重要とされ、アメリカの場合商務省の関連機関である米国標準技術局(NIST)を中心に、標準化作業が急ピッチで進められたとのことです。

 

・EUの場合
石炭が占める割合が高く施設老朽化が進む中で、CO2排出量が高く単純立て替えが難しいことと、北海油田の衰退により、中東原油とロシア天然ガス輸入量増大による地政学的リスクが高いことが指摘されていた時代です。

 

原発の見直しも反原発で国ごとの濃淡がある状態でしたが、1次エネルギーに閉める再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%にする目標を掲げてスマートグリッドを推進しました。
EU全体での再生可能エネルギーは北部海岸線の風力、地中海地域の太陽エネルギー、内陸部でのバイオマスエネルギー等で、EU内でのインフラ整備と、作られたエネルギーを受け入れるための蓄電池を含む調整手段が必要だったとされます。

 

アジアやアフリカでも導入計画が進んでいました。電力無供給地域に迅速供給するためには、長大な送電線を建設する余裕が無く、蓄電池と地域資源利用がより現実的だったためです。

 

・中国の場合
エネルギー需給逼迫と環境問題は切実な問題で国策として大規模な再生可能エネルギー開発を進めました。
低コストの風力発電先行だが19年までに内モンゴル地区に出力200万キロワットの大規模発電所の建設を予定し、地域格差問題待ったなし状態で、西武地区の電化を急ぐ必要性も背景にありました。

これらはいずれも10年以上前に取り上げられていた話であり、今の話ではありませんん。

 

・日本の場合
そして、当時の日本はどうだったかと言うと、2008年政府策定の「低炭素社会づくり策定計画」(太陽光発電を20年度に10倍、30年度に40倍)が、09年4月の「経済危機対策」で太陽光発電の”導入抜本加速“を明示して「20年までには20倍程度」と前倒ししたが日本の計画は世界と比べて格段に遅い状態にありました。

 

欧米に遅れをとれば統一的規格制定にも乗れないし、標準化技術ともならない。互換性、安全性、生産効率といった問題は序の口で、特許技術取得により得られるだろうロイヤリティー収入の機会を失うという巨大なデメリットが言われていたのです。

 

当時の米国エネルギー長官スティーブン・チュー氏が、裾野が拡大するスマートグリッドは標準化の重要性について、「スマートグリッドの普及に必要なのは技術ではなく、制作と標準(化)だ」といった通り、このままでは乗り遅れることは必至でした。

 

当時は世界中で見ても、日本の蓄電池や送電線分野の技術が優れていた状況にありましたが、標準化に遅れれば日本独自規格で進めてきた蓄電池やメーターが、スマートグリッドに接続できない、そうなれば欧米などはもちろん、次の市場となる新興国に日本の技術を輸出できなくなるという問題も指摘されていました。

 

言い換えれば「日本は優れた技術力を持ちながら、その活用やスマートグリッド全体の設計への関与、標準化の策定となると、一気に存在感が薄くなる」という状況が見えていたのですが、残念ながら政治と経済界はその道を強力に押し進めることがないまま、今に至っています。

 

今こそ総合的なエネルギービジョンの大転換を政治主導で実現していく時です。
時間の猶予はありませんとお訴えし続けてきましたが、菅総理の所信表明演説を聞いて2050年カーボンニュートラルなどという、まるで中身がないお話ししかないことがよく分かり、愕然としています。

 

自公政権にこれ以上まかせて良くなるようには全く思えず、もはや国民の利益につながりませんので、政権交代して抜本的に変えていきたいと思います。
頑張ってまいりますので、ご期待ください。