「日本の公文書管理と政治の責任(無責任)」(ヨナオシフォーラム2020)11月24日

国会・国政

 

「ヨナオシフォーラム2020」は、「世直し」のための政策提言を行うことを目的としていますが、立ち上げの時から私もお手伝いをさせていただいており、以下の5つの柱を立てて毎週議論を続けています。

 

★5つの柱
1. 感染症の徹底的な検査・追跡・隔離・治療の体制を確立することが、経済を再生する
2. 分散ニューディールを軸とする「緑の復興」
3. 緊急支援・緊急雇用と、公正で未来志向の税財政の再建を目指す
4. 行政・司法・政治を再構築し、公正性・透明性・参加性ある民主主義を取り戻す
5. 性差別をはじめあらゆる差別をなくし、多様性を尊重する包摂型の開かれた社会を目指す
※「ヨナオシフォーラム2020」 https://yonaoshi2020.jp/

 

第11回目の集会となる今回は、自殺者まで出した森友学園問題を題材にして、日本の公文書管理と政治の責任(無責任)をテーマに相澤冬樹氏、三木由希子氏をスピーカーに迎え、これからの方向性を議論しました。

 

安倍・菅政権による「森友事件」と「公文書改ざん」
今、まさに日本の民主主義が危機に瀕しています。
公文書の改ざん、役人にとって、一文の得にもならないことを、エリート官僚中のエリートである財務官僚自らが忖度して実行する。そして、安倍・菅政権になってからは、その改ざんされた事実に基づいて国会は何年も審議を強いられてきています。

 

これまでも国会での追及で財務省幹部の虚偽答弁や文書の改ざん、隠蔽、廃棄といった不祥事が相次いで明るみに出ました。
森友学園の国有地取引をめぐる財務省の決裁文書改ざんでは、佐川理財局長は、国会答弁との整合性を図るために、取引への関わりが注目された安倍晋三首相の昭恵夫人や複数の政治家名、「本件の特殊性」などの記述を決裁文書などからことごとく削除させていたことが明らかになったこともありました。
この時のきっかけをおさらいしたいと思います。

 

始まりは2018年3月2日、朝日新聞が森友文書に書き換えの疑いがあると報道したことからでした。
この報道によって、財務省は、3月6日までに調査状況を報告すると、衆議院財務金融委員会で答弁せざるを得ませんでした。

 

3月5日、国土交通省が、同省の保存する財務省作成文書の一部が書き換え前のものである可能性を首相官邸の杉田官房副長官と財務省に報告し、杉田副長官は翌6日に菅官房長官に報告したにもかかわらず、期限である3月6日に、財務省が文書の書き換えに関する調査の状況を国会に報告した際、書き換えの有無については言及しませんでした。

 

そして3月8日、財務省が、「決裁文書」である貸付決議書や売払決議書を国会に提出した際にも、既に開示されていた文書と同じ改ざん後のものをワザワザ大量にコピーして国会議員に配付しました。

 

しかし、翌3月9日、朝日新聞によって「『森友文書 項目ごと消える』売却決裁の調書、契約までの経緯が項目ごとなくなる」と報じられ、また、同日、財務省近畿財務局の男性職員が3月7日に自殺したことが報道されると、佐川国税庁長官が辞任し、ようやく、財務省は3月12日、「決裁文書の書き換えの状況」を国会に提出し、14文書に書き換えがあることを報告。
3月14日には太田理財局長が参議院予算委員会において、国有地売却等に関する決裁文書に関し説明する中で、「昨年2月下旬から4月にかけて、財務省理財局において決裁文書の書換えが行われておりました。」との答弁を行いました。

 

さらには、必要な財務基盤がなかった森友学園に財務省が前例のない異例の対応を重ねて、最終的には、国民の財産である国有地をゴミの撤去費を名目に9割引、それも10年分割で売却した疑惑についてもNHKが2017年2月に理財局の職員が「トラック何千台も使ってごみを撤去したと言ってほしい」と学園側に「口裏合わせ」を持ちかけたと報道すると、4月9日の参議院決算委員会において、当時の太田理財局長は、
「森友学園が地下埋設物の撤去に実際に掛けた費用に関して、相当掛かった気がすると、トラック何千台も走った気がするといった言い方をしてはどうかという話をしたということでございます。
ただ、この理財局の職員は、その後、近畿財務局の職員にも再度念押しするようにという話をしているんですが、近畿財務局の職員は、それは事実に反するということでそういう作業、確認、念押しをするということは行っていないということでございました。
また、先方、森友学園側の弁護士さんの方も、今の電話の話を踏まえた対応というのはされておられない、そういうことはおっしゃっておられないということでございます。森友学園側に事実と異なる説明を求めるという今申し上げた対応は、間違いなく誤った対応でございます。大変恥ずかしいことでございますし、大変申し訳ないことでございます。深くおわびを申し上げます。」
と述べて、事実関係を認めました。
ところが、大阪地検特捜部は5月31日、決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成など全ての告発容疑について、財務省幹部ら38人全員を不起訴処分としました。
特捜部長は、その理由を「文書の効用を失ったとは言えず、うその文書を作ったとは認められない」としたのです。

 

また、大阪府豊中市の国有地を2016年6月、森友学園に売却した際、地中ゴミの撤去費8億1900万円が差し引かれ、価格が1億3400万円とされたことについても、特捜部は、撤去費の算定が不適切とまでは言えないとし、故意に国に損害を与える目的があったとは言えないとしました。

 

問題は、大阪地検特捜部の判断にことの重大さが全く反映されていないと言うことです。
なぜなら、財務省幹部が虚偽答弁、文書の改ざん、隠蔽、廃棄といった不祥事を行ったのは、全て故意に国会を欺くためであったということで、何の政治的な背景もなく行われた事件ではないという点です。

 

つまり、一連の事件は、「国権の最高機関」である国会が政府側に侮られた問題、その意味で、国民主権の根幹、三権分立に関わる問題であって、これを放置すれば、民主主義が崩壊しまいかねない重大事件です。

 

議院や委員会への捏造・偽造文書の提出は、米英議会であれば、議会侮辱罪で告発に値する事件であるにもかかわらず、大阪地検が一般的な公文書管理の問題に矮小化して処理してしまったことに憤りを覚えるという声も大きかったわけです。

 

さらに、これによって、財務省幹部による虚偽答弁、文書の改ざん、隠蔽、廃棄といった不祥事が何のために行われたのかという、一番大事な事柄が追求されることなく、もっぱら文書管理上の問題だけがクローズアップされた形になってしまいました。

 

大阪地検特捜部の判断を受けて、6月4日に発表された財務省の内部調査、すなわち、森友学園との国有地取引に関する公文書改ざん調査を財務省職員に対して行った調査でも、改ざんについて、特捜部と全く変わらない認識が示されています。

 

調査を指揮した麻生財務相は同日の会見で「調べた範囲では、安倍昭恵氏がかんでいるから、というものは認められていない」と述べましたが、安倍昭恵氏は、そもそも調査の対象から除かれていたのですから、当たり前といえば当たり前です。何を言ってるのか?大丈夫でしょうか?

 

こうして、この「なぜ」という疑問に一切答えることなく、財務省による文書改ざんが国会での紛糾を回避する目的だったとする調査結果をまとめた麻生財務相は、閣僚給与1年分を自主的に返納することを明らかにしましたが、政治責任を取る意思さえ見せないまま、安倍首相によって続投が宣言されたのであります。

 

しかし、理財局長が忖度に基づいて、ウソの答弁を1年以上も続け、国会を軽んじても、その責任者である政治家が何の責任も取ろうとしないこということが、国家のあり方にどれだけのダメージを与えているのか、国家への国民の信頼がどんなに傷ついているのか深刻に考えるべきです。

 

自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さんの手記
その後、この問題では財務省の公文書改ざんに加担させられ、自ら命を絶った近畿財務局の赤木俊夫さんの手記が公表されました。

 

そこには、すべてが当時の佐川理財局長の「指示」だったとして、関係者の実名と共に、一連の経緯が事細かに記録されていましたが、その佐川氏が後に国税庁長官に就任するなど、改ざんを命じた側の幹部が軒並み「出世」するなか、赤木氏は自責の念に苦しみ、死を選んだことが明らかになっています。

 

最期に残したメモには「最後は下部がしっぽを切られる」とありました。
安倍首相と麻生財務相は、2年前に財務省がまとめた内部調査と手記の内容に「大きな乖離」はないとして、再調査に応じない考えを繰り返し答弁しています。
このため、赤木さんの妻は3月、赤木さんが自殺したのは公文書改ざんに加担させられたからだなどとして、国や佐川元理財局長を相手取り、計約1億1200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴しました。

 

また、遺族は「報告書の内容は曖昧で、夫が自死に追い込まれた経緯や原因を知ることはできません」と訴え、第三者委員会による公正中立な調査の実現を求めていますが、妻の弁護団は、署名が35万筆を突破したと発表しました。

 

他方、野党も「手記と財務省の調査報告書に食い違いがある」ことを指摘しつつ、「第三者を入れた新たな調査委員会を国会や政府に立ち上げるべきだ」と要求しましたが、安倍前首相も、麻生財務相も再調査を行う考えはないと、設置を拒否し続けています。

 

そして、この嘘を公文書の改ざん、隠蔽、ねつ造でやってきていることは、まさに公文書を所管する内閣委員会の委員長が、率先して事実を明らかにすべきであり、委員会ではそのような行動は見られないのではないでしょうか。もはや、国家への国民の信頼を取り戻すため、仕切り直さねばいけないと考えています。

 

公文書管理問題と改正法案ほったらかし
今回のフォーラムで、古賀茂明さんから「官僚の公文書公開に関する6原則」というのを教えていたきました。
①文書は原則として公開しない
②公開する場合でも黒塗り部分を多くする
③審査請求で負けない限り余計な譲歩はしない
④絶対に公開できない情報は個人的なメモ扱いとし、公文書としては存在しないことにする
⑤公開が避けられない文書には問題のない内容だけを記す
⑥公開する場合もなるべく時間をかけて出す

 

大阪地検特捜部の判断のもう一つの大きな問題は、改ざんの方向性を決定づけた財務省の佐川前理財局長が刑事訴追されないことで、司法の信頼性がおおいに損なわれたことであります。
法の不備と言われても仕方ない事態であり、公文書管理法を改正して厳罰化することは最低限、必要な措置であると考えます。

 

そこで私は、これらの問題に対処するため、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけている公文書管理法の主旨に合う内容にした「公文書管理法改正案」を作り、2017年の195国会に提出しましたが、今に至るまで審議されていません。
与党の皆さん、しっかり議論をしようではありませんか。
※議案名「公文書等の管理に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過情報
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DD05B2.htm

 

安倍・菅政権は「桜を見る会」で国民に大嘘と言われる!
安倍首相主催の「桜を見る会」への招待状を宣伝に使って詐欺商法を繰り返していたジャパンライフの元会長がこの9月に逮捕されました。
安倍首相には、招待状が首相推薦枠で届いたのではないかと言う疑惑に答える責任がありますが、首相自身は個人情報を理由に回答拒否を続けました。問題は説明放棄だけではありません。

 

「桜を見る会」をめぐる予算委での立憲民主党議員の質問に「意味のない質問だよ」とヤジを飛ばすなど、首相の答弁ぶりは、権力者のおごり以外の何者でもありません。
また、後を継いだ菅政権も資料が保存されていないことを理由に、野党の再調査要求を拒否しています。

 

今週になって安倍総理側が補填をしていたということが報道されました。
本当なら嘘ばかりのどうしょうもない政権です。
まっとうな政治を取り戻してまいりますので、皆さまのご指導、ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます!