内閣委員会 報告(重要土地等調査法案について)5月26日

国会・国政

 

「重要土地等調査法案」について、その後の質疑を小此木大臣と内閣委員会でさせていただきましたのでご報告します。本会議登壇(5月11日)を受けてのものです。

https://lets-go-yokohama.jp/kokkai/15797.html

 

【1. 立法事実の問題】
まず立法事実についてです。
本会議質疑の際に、私から、「2010年以降、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島などで安全保障上のリスクとなるような土地取引が行われたことがあったのか」との質問しました。

 

これに対し、大臣からは、
「御指摘のような事例が過去にあったか否かについては、安全保障上のリスクを回避する観点から、お答えすることは適当でない」
との回答がありました。

 

これは、全く納得できるものではありませんでしたが、その後、21日の内閣委員会における質疑で、この大臣答弁の意図が分かりました。

 

2013年に閣議決定した国家安全保障戦略を受けて、防衛省は防衛施設隣接地について累次調査を重ねてきたが、不動産登記簿等の一般に入手可能な資料による調査であったので、地目以上の利用実態までは把握できないなどの限界があった。

 

従って、
「その限りにおいては自衛隊や米軍の運用上の支障を確認できていない」が、
「一方、この結果のみからは、本法律案が対象とする防衛関係施設や離島等の隣接地以外も含む周辺において、本法案が想定している機能阻害行為が全くなかったと予断できるものではありません」
ということを、大臣は述べたかったわけです。

 

しかし、大臣はそう言いながら、
「政府としては、土地等の利用に関する安全保障上のリスクに対応するため、本法案を取りまとめた」
と述べ、何の根拠も示さず、顕在化はしていないけれども「安全保障上のリスクというものは常にあろうと私は認識しています」と断定したことになります。

 

そして、私からの
「安全保障上のリスクとなるような土地の取引の事例が過去にあったか?」
という質問に、
「今後の政府の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、安全保障上のリスクを惹起しかねないことから、お答えを差し控えさせていただいた」
とお答えました。

 

これでは全く話になりません。
なぜならば、立法事実を抜きに、法案の内容が妥当なものであるか否かを判断することができるというに等しい答弁だからです。
安全保障上のリスクは常にあるといいながらも、法案が問題とするそうした土地の取引の事例があったか否かすら、答えないのでこれでは何も事実に基づく議論ができません。

 

そこで、なぜ安全保障上のリスクを惹起するのかを再度確認させていただきましたが、残念ながら「安全保障上、リスクがあるので国会への情報提供は控える」という旨の大臣による政府答弁を繰り返すばかりですが、こんな答弁が法案審査の場でまかり通るようになれば、これは民主主義の根本を否定することになります。

 

なぜならば、国民には説明しなくていい、統帥権が独立しているから国会は軍のやることに関与しなくてよいという、戦前の論理とどこが違うのか? という方向に繋がるやり方だからです。

 

こうした道理の通らない政府の新論理を認めると、今後、安全保障関係の法律は全て国会の関与を最小限にするということが当たり前になります。大問題ですので、この点について、しっかりと政府に対応するよう強く要請させていただきました。

 

【2. 「法的予見性の問題」】
次に「重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為」とした定義について、法的予見性が乏しいとした私の本会議の指摘に対し、大臣は、
「機能阻害行為については、予見可能性の確保の観点から、閣議決定する基本方針において、想定される行為をできるだけ具体的に例示したいと考えております」
と答えました。

 

しかし、その一方で、
「法律や政令において機能阻害行為の類型を限定列挙することとした場合、その類型を潜脱する行為や明示された類型以外の機能阻害行為を助長するおそれがあると考えております。このため、法律等の規定において機能阻害行為の類型を限定列挙することは適当ではないと考えています」
とも述べています。

 

そこで、
基本方針に例示することと、法律に列挙することの違いを、政府はどのように考えているのか?
少なくとも、法律に列挙されなければ、列挙された内容が妥当なものか否か審議しようがありませんので、その意味でも基本方針ではなく、法律に列挙すべきではないか?
さらには、法律を避けて、基本方針に例示するとした理由はなぜか?
も再度確認しました。

 

しかし、残念ながら「基本方針において、想定される行為をできるだけ具体的に例示したい」とする旨の説明に終始されましたが、これもダメです。

 

なぜならば、これは法律が成立した後の話だからです。
果たしてどこまで納得のいくものが例示されるのか、なんの保証もありません。
くれぐれも後の祭りということがないよう、強く念押しさせていただきました。

 

【注視区域・特別注視区域の指定について】
本会議の答弁で、大臣は
「安全保障の観点から、施設の性格やその区域の地理的な特性等を総合的に勘案して、ケース・バイ・ケースで柔軟に設定し得る仕組みとしておくことが適当」
としつつ、
「制度運用の適正さを確保する観点から、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、指定の要否や範囲等の判断を行う」
としたことについても、再度質問しました。

 

なぜならば、この土地等利用状況審議会の審議内容が、ブラックボックスにされている限り、国会、つまり国民が政府判断を公正なものであるか否か評価することは不可能だと考えるからです。

 

そこで土地等利用状況審議会での審議内容を要約しか公開しないのでは不十分と考えるので、議事録も公開するように質しましたが、「土地等利用状況審議会」が政権の意図を隠す隠れ蓑にならないように願うばかりです。

 

もうひとつ大切な点として、大臣が
「特別注視区域として、いかなる区域を指定するかについては、法施行後に法定する手続に沿って決定することとしております。したがって、現時点において、御指摘のあった市谷の防衛省や海上保安庁の施設、原発などの重要インフラの周辺について、特別注視区域の対象から除外することを決定した事実はありません。」
と述べたことについてです。

 

私の引用した報道は、政権党間の政治的合意を明らかにしたものですから、「正式決定」でないのは当たり前のことで、これでは質問に対する答えになっていません。

 

そこで改めて、この政治的な合意が実質的に維持されるのか否か、また、こうした法案を、骨抜きにする事態を回避する意味でも国会の関与が必要であると思うことも述べさせていだきました。

 

この問題、11日の本会議において公明党の濱村進委員から、
「防衛関係施設であれば全ての施設が指定を受けるというわけではなく、・・・注視区域、特別注視区域に指定する基準は、それぞれどのような要件を想定しておられますか。また、四条二項二号にある経済的社会的観点から留意することで、どのような影響が生じると想定しておられますか。区域指定の基本的な考え方について、小此木大臣に伺います」
との質問がありました

 

この公明党の濱村進委員の質問に対し、小此木大臣は
「この特別注視区域の指定については、基本方針に定める経済的社会的観点から留意すべき事項を踏まえて評価した結果として、例えば、施設周辺の密集市街地の形成状況等に応じ、特別注視区域の要件に当たる区域であっても、当初は注視区域として指定することがあり得るものと考えています。」と答えました。

 

これはまさに、報道にある政権与党間の政治的合意が、四条二項二号にある経済的社会的観点から留意するとの文言に凝集されていることを示しており、その文言を政府として遵守するとの誓約を大臣が述べたものであります。

 

まるで「経済的社会的観点から留意する」との文言が政府案に初めから挿入されていたかのように答弁するのは、国民の目を欺くことに他ならないと考えます。

 

【3. 調査情報の管理の問題】
個人情報の取扱い方法について法律案に何の規定も設けていないと指摘したことに対し、大臣は、
「本法案に基づく調査により収集された個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、個人情報の漏えい防止のため必要な措置を講じる」ので、
「本法案においては、個人情報の取扱方法に関する規定を設けていないところであります。」
と述べています。

 

しかし、私が特に指摘したいのは、「必要な措置」として「提言」では土地取引の実態を一元管理する組織を新設するとしているのに、法律案にはなんの言及もないことです。

 

本法案の第三条に、組織の新設と所掌事務を書き込んで、個人情報管理の責任主体を明確にすべきであると考えます。
それなくしては、個人情報の保護に関する法律が定める個人情報の漏えい防止もおぼつかないと考えます。

 

今回の法律案は、必要最小限の規定をするにとどめ、肝心の内容は全て政令等に委任していることに特徴があります。
国会軽視も甚だしい法案で、法案の内容よりももっと重大な問題であることを強く指摘します。

 

大臣の答弁では、第7条による収集情報は、
「氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られ」、
また、第8条によって
「報告等を求めることができる事項は、条文上、土地等の利用に関するものに限定」される
としています。

 

しかし、こうした調査情報だけで、特定の土地や建物の利用実態が「我が国の安全保障に問題となるような不適切な利用行為」だと断定できるとは、とても考えられません。

 

この点に関しては、中谷真一議員の質問に対し、小此木大臣は
「加えて、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みも今後検討いたします。このように、関係省庁の協力を得ながら、きめ細かい情報収集を行うことによって、できる限り具体的な実態把握に努め、調査の実効性を高めてまいります。」
と答弁しました。

 

ここで述べている「重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組み」とは、何を意味しているのでしょうか。

 

この「情報提供の仕組み」は、法案のどの条文に根拠があるか。
あるとすれば、本法案の第6条、第7条、第8条の調査とどのような関係にあるのか、についても確認をさせていただきました。

 

「機能阻害行為に関する情報」は、第6条、第7条、第8条による「土地等の利用に関する個人情報」とは、別物と考えられ、いわゆる公安情報にも場合によっては該当すると考えられます。

 

しかし、事前の法案説明では、そうした重大情報の収集について一切説明がありませんでした。
これでは、まともな審議もできません。

 

おそらく、法律に基づく「土地等利用状況調査」とは別に、警察庁や公安調査庁などがそれぞれの権限に基づいて、問題となるような案件を調べているものと思いますが、それらの情報を突合して分析するとなると、当然、法律の根拠が必要です。

 

その意味で、意図的に法案に何の規定も設けていないとすればこれは大問題です。

 

法案が取り締まり対象とする「機能阻害行為」は、安全保障上の問題となるような行為ですから、それが外国勢力によるものであれば、極めて深刻な事態になります。

 

その意味で、「機能阻害行為」が見つかった場合、それを端緒として、背後の指揮系統や協力者等、いわゆる組織犯罪を摘発することが必要ではないかと考えられますが、法案ではなんの言及もありません。
そうした事態に対処することについて、政府ではどのように検討したのかということです。

 

「土地等利用状況調査」によって収集された情報は、「我が国の安全保障に係る情報」に該当すると思われます。
従って、秘密保護について特別な管理が必要だと思いますが、それに関する規則はどのように定められるのか?

 

また、「土地等利用状況調査」が外部委託される場合、「現地・現況調査」に係る情報の秘密管理は、どのように手当てするのでしょうか。
例えば、調査員の守秘義務違反に刑事罰を科すのか?

 

防衛省として「現地・現況調査」に係る基地の隊員を限定するなど、特別な体制を組む用意があるのかも確認させていただきました。

 

そして、法律が成立した後に、「現地・現況調査」に係る体制整備をするので、今は何も準備していないとのことですが、それでは2013年以降任意で行ってきた「現地・現況調査」は、どのような体制で実施したのかなど、論点はつきませんので引き続き会派でもしっかり議論をしてまいります。

 

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