安全保障委員会 報告(5月21日)

国会・国政

 

安全保障委員会に登壇し、外務大臣、防衛大臣、経済産業副大臣、警察庁、内閣官房の皆さんと議論をさせていだきましたので、ご報告させていただきます。

 

【1. 大規模接種センターの問題】
まず、本題に入る前に、自衛隊による大規模接種センターについての議論をさせていただきました。

 

菅義偉首相は4月27日、新型コロナウイルスワクチンの大規模接種会場を自衛隊が設置するよう岸信夫防衛相に指示し、東京と大阪にそれぞれ接種センターが設けられることになりました。

 

しかし、感染症対策としては、過去最大規模の延べ約4900人の自衛隊員を4都県に送り込んだ昨年の対応が自衛隊法83条に基づく「災害派遣」であったのに対し、今回の対応は、自衛隊病院の設置等を規定する自衛隊法27条と同法施行令に基づくものです。

 

つまり、自衛隊中央病院と自衛隊阪神病院が、それぞれ自衛隊員らの診療や地域医療を担いながら、その一環として接種業務も行おうとするもので、これまで想定されていなかった新事態です。

 

そこで、今回、「災害派遣」の枠組みを使わず、通常業務の延長で対応しようとした理由。また、今回の枠組みは、あくまでの例外事態であるのか、それとも「災害派遣」の代替手段として常態的に使われる可能性があるのかについて防衛大臣にお聞かせいただきました。

 

「災害派遣」の枠組みは、本来業務との差別化あるいは、シビリアンコントロールの面からもよく考えられた制度であると思います。その観点から、病院業務を「災害派遣」でも行えるよう、制度設計を考えるべきだと考えるからです。

 

また、大規模接種センターでは、1日あたり1.5万人規模の接種を目標にしていますが、自衛隊中央病院では新型コロナの感染拡大後、コロナ患者も受け入れ、感染者が増えると専用病床の拡張にも対応していると聞きます。

 

従って、ワクヂン接種に人手が取られれば、自衛隊や地域への医療提供という本来の業務が手薄になるおそれが極めて高いと考えます。

 

そういった意味で、東京や大阪の接種センターには、医官、看護官等の自衛隊員を約440名を充当するそうですが、交代要員を含めると、設置期間の3ヶ月で延べ何名の自衛隊員を動員することになるのか。そして、オリンピックやパラリンピックを控える中で、本当に人手が回るのでしょうか。
計画の実効性をについて質問させていただきました。

 

今回の人海戦術を遂行して、自衛隊の本来業務や地域医療が本当に大丈夫だといいが、というのが率直な感想です。

 

昨年のコロナ対応でも、一人の感染者も出さずやり抜いたことで、自衛隊の能力の高さは十分承知しているところですが、やはり、何事にも限界というものがあり、精神論だけでやるのは危険極まりないので、特に、大臣を含む幹部の方々には、そうした配慮をお願いしたいと思います。

 

【2. 米中対立と科学技術を巡る覇権争い】
さて、本題の米中対立とそれに伴う経済安全保障についてです。

 

今日の世界情勢を理解する鍵が「米中対立」にあると言って過言でないと考えますが、その「米中対立」には、二つの側面があります。

 

一つは、地政学的な覇権の問題です。アジアの経済規模は2010年には北米や欧州を超え、20年代半ばには世界経済の3分の1を占めるまでになりました。

 

大きく伸びたのは中国で、18年には世界経済の16%を占めました。また、ASEANやインドも、20年代末までに経済規模で日本を超えるだろうとされています。
その意味で、インド太平洋地域は、まさに世界経済の中心になろうとしていると言えますが、そのインド太平洋地域に、中国が「一帯一路」の巨大経済圏構想に象徴される勢力圏構築に乗り出したことで、米国との対立が起きています。

 

米中対立のもう一つの側面は、科学技術を巡る覇権争いです。
科学技術は世界を急速に変えつつありますが、特に新興技術が21世紀の安全保障と産業の鍵になると考えて、米国や欧州諸国、中国は争って大きな投資しています。

 

中国は、現在、ハイテクやAI分野で米国と互角の戦いをしていますが、このハイテク分野で、米国との覇権争いが先鋭化しています。

 

日米同盟を基軸とする我が国は、当然、こうした世界情勢と無関係ではいられません。
そこで、今日は、米中対立の第二の側面である科学技術を巡る覇権争いについて質問したいと思います。

 

2018年3月22日の米通商代表部(USTR)の報告書には、中国の知財侵害として「4つの手口」が挙げられています。その1が、外資規制で技術移転を強要するやり方です。

 

まず、①高い関税で輸入品を締め出し、中国市場に入りたい外国企業には国内生産を求めます。ついで、②中国企業との合弁会社設立を条件とし、合弁会社はバッテリーなど中核技術の知財を保有しなければ製品を売れない規制を設けます。そして、③最終的には技術を中国側に渡さなければ事業ができないように仕向けるという、ことを述べているわけです。

 

当然、多くの日本企業が中国に進出しているわけですから、日本企業にもこうした手口の被害にあった例はあったと考えますが、政府として、こうした中国の知財侵害にどのように対抗してきたのか、歴史的な経緯も含め経産副大臣、外務大臣に確認させていただきました。

 

また、第二の手口として「米国企業が中国企業と技術供与契約を結ぶとき、中国企業間ではかけない厳しい規制をかける」といったこと、また、第三の手口として「先端技術を持つ米国企業を買収するにあたって、中国政府が資金援助をする」といったことが指摘されていますが、日本政府として、こうした事態にどのように対抗してきたのについても議論しました。

 

中国の国有企業が日本の民間企業を買収することがあるとすれば、それ自体、問題だと考えますが、これを防ぐ手立てはあるのか、あるならば、どのような仕組みかも財務副大臣にご説明いただきました。

 

第四の手口は、米国企業へのサイバー攻撃です。米国では、人民解放軍の攻撃を受け、鉄鋼や原発などの米国企業から情報漏洩があったとのことです。

 

日本でも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)へのサイバー攻撃に関し、警察庁の松本長官が攻撃に中国人民解放軍の部隊が関与した可能性が高いと述べ、また、国内約200の企業などへの一連のサイバー攻撃が「Tick」と呼ばれる集団によって実行されたと指摘しました。

 

その背後には、青島市を拠点とする軍の戦略支援部隊「61419部隊」が関与した可能性が高い、と説明したと報道されていますが、この一連の事件の全貌と、おそらく初めてであろうと思いますが、今回なぜここまでの解明ができたのか、また、なぜ、あえて中国を名指しする形で発表したのかを警察庁に聞かせていただきました。

 

【3. 中国IT機器の問題】
経済安全保障では、米国のトランプ政権が、中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)製品の排除を強力に求めたことは記憶に新しいことだと思います。

 

正確に言えば、5Gという次世代通信インフラに関し、ファーウェイが市場で圧倒的な力を持ち、このまま市場原理に任せておけば、中国製品が市場を圧倒し、西側諸国の企業が市場から駆逐されるという懸念があること。

 

また、それによって、5G通信インフラを中国企業に依存するという状況が生まれた場合、この通信インフラを通じて交換される情報が中国に筒抜けになってしまう可能性があること。

 

さらには、米中間の対立が激しくなった場合、中国企業から製品供給を止められたり、中国製品の中に埋め込まれたコードによって中国製品が社会経済的に不可欠なインフラを攻撃するような事態も想定されることを避けたいとする安全保障上の考慮から取られた措置と理解します。

 

そこで、政府の対策は、どこまで進んでいるのか。一方で、中国企業ということだけをもって排他的措置を公然と取ることも自由主義経済になじみません。
そこでどのような考え方に基づき、そうした措置が取られたのかも議論する世必要があります。

 

また、米政府は人権保護や安全保障の観点から、ドローン世界最大手の中国DJIに対する事実上の禁輸措置を発動しました。
日本も政府機関や民間インフラ企業において、中国DJI製ドローンから国産品への代替を進めていると承知していますが、どこまで進んでいるのかも確認しなければいけません。

 

その際、日本政府として、中国製ドローンから情報が中国に流れている事実、また、その危険性を確認しているのかどうか。
また、高性能の国産品は少なく、代替が必ずしも順調に進まないとも指摘されていますが、こうした事態に政府は対策をどのように打っているのかについても、内閣官房と議論させていただきました。

 

世界のドローン市場の約7割を中国のDJI社が占めるまでに手をこまねいていたこと自体、驚きです。
安保上の認識はなくても、政府として、1社にここまで依存するリスクは、考えなかったのでしょうか。

 

数年前、サウジアラビアの石油施設がドローンによって攻撃されるという事件がありました。
衛星によって精密誘導されたと思われる18機のドローンが攻撃したとのことですが、犯人は分かっていません。

 

ドローンは「貧者の兵器」とも言われ、今や、非国家勢力までもが活用しています。
そして、多くの機体が星雲のように群を成して襲って来れば、これを迎撃ミサイルで撃ち落とすこともできません。
さらに、1機1000ドルのドローンを1発3000万ドルのパトリオットで撃ち落とすのは、極めて不合理です。

 

他方、自衛隊においてドローンの利活用を進めることは、我が国の防衛にも大きな意義を持つと考えますが、現在、どのような進捗状況にあるのか、ご説明いただきましたが、十分な答えは返ってきませんでした。

 

本来は「統合防空ミサイル防衛」の一環として、位置付けられるべきものと思いますが、その中でのドローンによる攻撃への対処方法はどのようなものか、また、ドローンをどのような場面で防衛に活用することを考えているのかについては、引き続き議論が必要です。

 

【4. 中国の不買運動の問題】
最後に、中国による少数民族ウイグル族への弾圧や強制労働に関連して、欧米諸国が人権侵害であるとして、対中制裁を強めているのに合わせて、企業の側も指摘されている中国からの原料調達を控える動きを見せている問題を取り上げます。

 

これは一見、経済安保の問題では無いように思われがちですが、中国は、こうした原料調達の見直しを表明した企業に対し、不買運動や営業妨害を行っています。
例えば、スウェーデンの衣料大手H&Mには、インターネットで「二度と買うな」といった投稿が集まり、通販サイトで商品が検索できなくなったと報じられています。

 

日本のファーストリテイリングも、過去に人権問題への懸念を示したことをネット上で批判されたことがありますが、こうした不買運動は、中国政府の後押しなくしては不可能な国柄ですから、日本政府としても毅然とした態度を示すべきだと考えますので、外務大臣にお願いさせていただきました。

 

こうした不買運動も、巨大化した中国市場に依存せざるを得ない弱みを利用した中国政府の恫喝に他なりません。

 

日本政府として、中国政府にこうしたことをやめるよう、はっきりとした姿勢を示さなければ、当該企業が中国政府にますます何も言えない状況に追い込まれるのではないかと危惧いたします。

 

当然、中国政府の反発はあるでしょうが、それで政府が何も言わなければ、以後、ますます物が言えなくなりますので、しっかりとした政府対応が必要です。

 

こういったことも含め、今後更に議論を深めていければと思いますので、引き続きご注目いただければ幸いです。

 

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衆議院議員 しのはら豪(立憲民主党、神奈川1区)
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