【登壇報告】予算特別委員会「温暖化対策統括本部・環境創造局」
本日の平成24年度予算特別委員会において、「温暖化対策統括本部」、「環境創造局」の平成24年度の予算内容に関してみんなの党を代表して質問を行いました。
私の問題意識は、『将来への投資 ~「ないものねだり」から、「あるものさがし」へ~ 』です。ポイントは、今政治も行政も小さくなっているなかで、個別の事業審査ばかりにとらわれて、大局観を失っていることに、大変な危機を感じています。そこで、地球とは何か、文化歴史とは何か、日本人とは何かといった文化的なことからお話をすることにしました。
終わってみて、これまで全くなかったカタチですが、ご好評をいただき、ありがたく思っています。そこで、長いですが、具体的な質問内容と問題意識を、全文掲載させていただきますので、お時間のある方はお目通し頂ければ幸いです。
篠原豪
Let’s go YOKOHAMA!
【審査に備え、日本各地から観光客を集める北海道旭山動物園園長のあの坂東さんにお話を伺ってきました】
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【今回掲げたテーマ】『将来への投資 ~「ないものねだり」から、「あるものさがし」へ~ 』
【1】環境創造局とは
平成17年に再編された環境創造局ですが、「安らぎ・憩い・潤いに満ちた都市環境」をつくるとともに、「治水対策を一層充実」し、「快適で安全な市民生活を支える環境政策を推進する」局とした当時と、今の時代では、「環境」への考え方が、世界も日本も大きく変わったのだと思います。
①であるならば、局ビジョンそのものを、再度定義し直す時であると思うのですが、「環境」と「創造」とは何かという観点から、今求められる局の存在意義と、やるべき仕事のビジョンを教えてください。
【2】温暖化対策
温暖化対策本部のミッションは、最終的には、市内企業の海外展開を狙い、それを勝ち取っていくこと、と聞いています。
②市が総合的に推進する、横浜市地球温暖化対策実行計画の概要と具体的な取り組を教えてください。
【3】横浜市のスマートシティプロジェクト
スマートシティ市場は世界で2030年までに4000兆円規模になると言われます。その意味で、横浜版スマートシティプロジェクトは、スマートグリッドの世界の底流に何が流れているのかしっかり捉えた上で、① エネルギー、② 通信、③ IT、④ アプリケーションと行った幅広い観点から、実証実験を展開すべきと思います。
③そこで、横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証実験の具体的な内容と進捗状況について、現状どの分野で、どの程度まで進んでいるのか、教えてください。
この問題は私も2009年より研究をしています。なぜかといえば、日本が世界に生き残るための、唯一の道といっても過言ではないと当時より、考えているからです。
補足しますが、当時のエコノミスト誌を見ても、世界を見渡せば、アメリカのオバマ政権は、2009年就任間もない2月、スマートグリッド関連で総額110億ドル、補助金で45億ドル、事業者に39億ドルを配分するといった力の入れようです。また、ヨーロッパについては、エネルギー原料に石炭の占める割合が高いこと。
加えて、北海油田衰退で、中東とロシアからの輸入量増大による地政学的リスクが高いことなどで、再生可能エネルギー割合を、2020年までに20%にする目標を掲げ、スマートグリッドを推進中です。
また、アジアやアフリカを見れば、長大な送電線を建設する余裕は無く、スマートグリッドがより現実的として、導入計画を進めています。一方の日本は遅れています
④こういった状況をふまえ、今、横浜市がやっている実証の成果を、どう海外に展開していくつもりか教えてください。
《その後の答弁をうけて》大きな話しだけでなく、小さな話も大切です。とりわけ企業の利活用についてです。スマートシティプロジェクトのエリアのひとつである金沢区は、環境モデル都市の基幹プロジェクトとして、横浜グリーンバレー構想を推進しています。地元事業者の期待感も高いと思います。
⑤そこで、これまでの取組と成果をご報告ください。又横浜グリーンバレーを今後どのように展開していくのか、将来的な見込みを教えてください。
市民啓発について。家庭用太陽光パネルや燃料電池の設置に、これまで市が補助金を出していて、今年度予算案でも引き続き行う予定です。太陽光や燃料電池といったものは、スマートグリットの議論からすれば、ごく一部に過ぎず、あえて枝葉末節の部分は、これまでも常任委員会等で議論があり、この場ではあえてお聞きいたしません。市民参加として、もっと大切なのは、単純にエネルギー量と日常生活がどうからんでいるか、基本から啓発することです。
日曜日のことですが、地元の金沢区シーサイドタウン連合町内会において、これまで電力量の見える化について、市の実証実験にご協力をいただいたことへの報告が、温対本部よりありました。
⑥こういった取り組みも含め、市民や企業に対して、現場に実際に足を運ぶ中で、苦労していることを、実務レベルで教えてください。
行政内では「部局横断した事業展開・連携が必要」であり、行政外では市内企業と市民といったことだけでなく、市外の日本全国の他の自治体、また国外を見据えての戦略的仕組みづくりが必要です。今の考え方と規模の実験と検証といったことで満足するのでなく、冒頭で伺いましたように、最終的には、市内企業の海外展開を狙い、それを勝ち取っていくことが大切です。
⑦最後に、温暖化対策推進にあたっての意気込みを教えてください。
【4】生物多様性
以前、私の先輩やお世話になってきた森人プロジェクトの方々にいただいた、ひとつのお話をさせていただきます。石川啄木が同窓会市に「林中の嘆」という題名で寄稿したものについてです。人間と猿のやりとりで、以下の次のようなことが書かれています。
——-「サルは言いました。ああ、とうとう人間の最悪の思想を吐き出したな。人間はいつの時代にも木を倒し、山を削り、川を埋めて、平らな道路を作って来た。だが、その道は天国に通ずる道ではなくて、 逆の門に行く道なのだ。人間はすでに祖先を忘れ、自然にそむいている。 ああ、人間ほどこの世に呪われるものはないだろう。サルはそう言い終わると、 人間が気の毒でたまらなくなりました。 木の下の人間は、サルに真のことを言われたと感じつつも、 しかし、それを認めることはできませんでした。」
今、近代・現代文明が行きまり、あらゆる分野で矛盾やホコロビが噴出しています。その最先端の問題が、地球温暖化と環境破壊です。そのことに対する危機感から、人類の意識も大きく転換をせまられています。
文化人類学者のトール・ヘイエルダールさんは、NHKのテレビで語っていました。「進歩の行き先は何ですか? その目的は何ですか? 突き詰めれば『人が笑顔で幸せに暮らせること』ではないですか? 人の幸せは、便利なものに囲まれていたり、ハカリにかけて計るものではありません。幸せは感じるものです」と。
人はようやくそのことに気づき始めました。どうしたら迷路を脱することができるのか、手探りが始まりました。その解答の一つが、この物語にあるのではないでしょうか。——-
ということです。
⑧話は長くなりましたが、本市が考える生物多様性とは何か? また、森についての考え方を教えてください。
【5】食と農の連携による横浜農業の振興
同じ視点で続けます。最近「地産地消!」という声をよく聞きます。しかし、「地産地消」行政は、横浜市内的流通業者といった発想の域を出ない頭が多いのが実態です。地産地消とは、本来であれば、そういったものだけでなく、新たな仕組みを取り入れ循環させていく、いわば地域の食と農の循環型社会を形成して行くことだと思います。そこで、今ある事業を、少し変形させるだけでも、充分その仕組みづくりができるという私の考えについて、うかがってまいります。
まず、「担いの手育成」についてです。今は行われていない新規就農者が参入しやすい環境づくりにも力を入れるべきと考えます。なぜならば、農家継承といってもムスコムスメさんは継ぐことなく、会社仕事を求め、後継者はどんどん不足し、担い手は全国平均で67、8歳という現実です。一方、農業に参入希望する人も多くいますが、土地がない、就業する仕組みがないということでなかなか実現しません。これを解決せねばどうにもならないのは、明らかです。
⑨新規就農者の参入の仕組みづくりを実現していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
次に食育についてです。食育で何よりも大切なのは、子供達の食育です。人はなぜ食べることを、「喰う」ではなく「食べる」と言うのか? そして「食」そのものの本来の意味とは何か? こういったことを「日本人としての日本文化」を含め、子供達に教えてあげることが大切でしょう。この点、都市部や準都市部で育ち、三枚下しもできない日本人が多すぎる。子供のなかに、魚が三枚下しで泳いでいるということを本気で信じている子もいるという話も聞きます。
本来なら、自分が食べているものは、そもそも生き物であり、そのありがたさがわかれば、人格形成上必要な、事物万物に対する好奇心と、心優しい深い思慮を兼ね備えた子供を横浜で育ててあげることができるのだと思います。そのためには、本物に触れさせてあげなければいけない。
⑩そこで、畜産農家や漁業者を訪問し、家畜が育つ状況や、野菜の収穫を通じて食べるものに、直接触れることの大切さを理解してもらう仕組みづくりが必要と考えますがいかがでしょうか。
こういったことは実は農家の方々が支えてくれています。その農家の方々が今、希望を失っている。ところが、全国を見渡すと、同じような状態から脱却し、活力あふれる農業の姿があるのもまた一方では事実です。例えば、農家のレシピづくりでイベントをうって、大勢の人々を呼び込むことに成功した事例もあります。 全国に成功事例があるのですから、
⑪横浜でも「食と農の祭典」や「独自ブランド」への従来の形と考え方から脱却し、アイデアを発揮し、工夫次第で農業を発展させることができると思います。今こそ、その仕組みづくりが必要ですが、いかがでしょうか。
【6】動物園
ここまで、地球環境破壊についての温暖化対策、森と人とのかかわり、谷戸と日本人という日本人のDNA、言い換えれば「日本文化」とは何か? そして食文化とは何か? こういうことを通じて、横浜人とは何かを、予算にからめ、政治のメッセージとして発信してまいりました。この観点から最後に、横浜市の動物園について伺います。
今週の火曜日、串田委員とともにズーラシアを訪ね、村田園長と懇談をしてまいりました。村田園長が動物園の役割をどう考え、これからどう導いていこうかといったことについて伺うためです。そのなかで村田園長からは、最近生物多様性とか、環境との共生とかいうが、実は本来、プリミティブに備わっていたものだとの視点に立ち、もう一度環境創造とは何か? 「保全」とは何かを考えてみてはどうか? というお話がありました。哲学あるズーラシアの役割は、横浜と日本の文化創造の場であり、社会教育の場であり、研究の場であり、そして種の保全の場であることです。これを広く知って、共感していただきたいということです。
これを時代時代に応じて、お客様をひきつけることを一緒にやることで、命の大切さ、生と死を考える場として、また人間と動物とは実は一つの世界観なんだということを伝えていきたいということです。今は、命が分断されていて、人間はそれにもう一度気付くべき時がきているのだと。私もそう思います。
⑫こういったお話に感銘を受け、哲学ある動物園づくりを実現には、ただ短期的視野にたって考えるだけではなく、横浜市の大切な資産として、動物園をビジョンをもって長い目でお育ていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
【旭山動物園の人気イベント。ペンギンの行進です】
よく北海道の旭山動物園の成功例として、観光と一体になったプランが多く生まれたと言いますが、横浜市もホテル発着バスツアーなどを作れば、MICEと一体のプロモーションとしてすぐできることですので、その仕組みづくりはお願いします。しかし、ズーラシア最大の特徴は、実は「種の保存の場である横浜市繁殖センターがあることです」。村田園長曰く、このような動物園は日本中探してもどこにもない、この場所が実は最大の資源だということです。しかしながら、このことがあまり知られていない。こういう誇り高き日本一があることを、横浜市民だけでなく、世界とのつながりの場であることを共感してもらいたい。共感がないと市民や国民が動物園を支えていこうという気持ちにならない。それがないと動物園はもたないのだろうということです。
動物園にはいのちのつながりの場、自然を知る場なのだということを無くして本当にいいのか? ということです。これを意識して市民に応える場にもっていかないといけないということです。入園者数増加への取りくみに必要なのは、短期的には観光政策で、そして長期的には横浜ならではの潜在能力を活かすことです。言い換えれば、今あるものを活かして発信していけば、ないものをねだる必要もないのだろうということだと思いますが、いかがでしょうか。ここまでの話を踏まえ、
⑬ズーラシアに迎えた村田園長に期待していることについて、山田副市長に伺います。
【7】みどりアップ計画
予算のなかでとくに気になるみどりあっぷ計画について伺います。環境創造局には3つの特別会計があります。その一つに、みどりアップ計画(新規・拡充施策)を進めるための会計として、みどり保全創造事業費会計があります。この計画は、横浜市の緑を守り、つくるために、期間を定めて取り組んでいる緊急的な施策です。24年度予算案を見ると、環境創造局全体の予算規模では前年度から微減しているのに対しこちらは大幅に増加し、財源の一部である市債についても同様に増加しています。
⑭そこで、みどり保全創造事業費会計の市債が23年度に比べ増加している理由、樹林地保全に関するみどりアップ計画の数値目標の達成状況を教えてください。
達成状況についてはさまざまな意見があります。私としては、姿勢として数値目標を打ち出し努力していること、また局内でも一番行きたくない大変な担当箇所で、職員さもご苦労あるということで、評価しています。しかし現実的に、今後の買取希望が増加し、財源の確保が課題になることが想定されます。
⑮このことを踏まえると、樹林地の買取など、26年度以降の緑の施策についても検討を進めるべきと考えます。そこで、「みどり税」終了後の税を含めた計画や財源の方向性 をどう考えているのかを、伺います。
本日は文化を含め、岐路に立つ世界の中の日本と横浜ということを基軸に、ないものねだりから、あるもの探しへの転換を、という視座でのお話をさせていただきました。
環境創造局の役割をきちんと認識し、時代を見据えた取組を、ビジョンをもって粘り強く実施されることを要望し、私の質問を終わらせていただきます。
当局の答弁はこちらの動画から→http://www.yokohama-city.stream.jfit.co.jp/vod_play.php?CNTID=79661&PREVPAGE=%CC%E1%A4%EB
《終わり》