中国の海洋進出と戦略について(安全保障委員会質疑)(4月6日)
本日は前回委員会で行われた大臣所信に対する質疑を行いました。
会派から4人、私からは中国の海洋進出について、特に尖閣諸島をめぐる安全保障上の諸問題について外務・防衛大臣、関係省庁と議論させていただきました。
■南シナ海情勢
フィリピン政府は、南沙諸島(スプラトリー諸島)周辺の自国の排他的経済水域内に海上民兵が搭乗していると見られる中国漁船約220隻が集結し、日中、晴天でも操業せず、夜間は白色光を点灯させていることを3月7日に確認したこと、22日になってもなお183隻の中国漁船が確認されたとして中国に抗議しております。
これは、明らかに中国政府が力で現状を変えようとしている、つまり、係争海域に居座って既成事実を積み重ね、実効支配を図ろうとする意図があっての行為であると考えますが、政府は、こうした事実をどの程度、深刻に受け止めているのでしょうか。
何らかの声明を発表する予定があるかをはじめに伺いました。
同じような状況は、2019年にも発生しました。
南沙諸島のフィリピンが実効支配するパグアサ島付近に、漁業を目的とせず、約275隻の中国武装漁船と軍用沿岸警備船が集結した事件です。
中国は、パグアサ島から12海里ほど南西に位置するスービ礁を埋め立てて人工島にし、灯台をはじめとする交通管制施設や、各種レーダーなどの軍事施設、3000メートル級の滑走路や格納施設からなる航空基地、大型艦艇も使用できる港湾施設を設置し、充実した軍事拠点に変貌させていたわけですが、いよいよ、このスービ礁とパグアサ島との間に、近年自然に出現した3つの砂州の支配を口実に、フィリピンに圧力をかけてきたわけです。
この時は、1995年のミスチーフ礁や2012年のスカロボー礁のように、中国に奪い取られることはなかったわけですが、政府がどう分析しているのかを聞きました。
私はその背景として、中国の基本戦略、つまり「強制外交」が関係していると考えています。
すなわち、中国が軍事的な圧力を加えることはあっても、中国側からパグアサ島に海上民兵や海軍陸戦隊を上陸させたり、パグアサ島のフィリピン軍施設にミサイルを撃ち込んだり、フィリピン側艦船に攻撃を加えたり、といった軍事攻撃をいきなり加えることは想定していない、という基本方針があると考えており、そのことを指摘させていただきました。
中国の海洋進出は、西太平洋の覇権を確立するためですが、大規模な海戦でそれを達成しようとしているわけではないことを理解することが大切だと考えます。
つまり、近海地域では、米国が軍事攻撃に踏み切ることがないように、海上民兵や沿岸警備隊を使って海上権益を主張し、米海軍と中国海軍が直接対峙する機会を与えないようにしていると考えられます。
あくまでも、中国海軍は背後に控えることで、近隣諸国に恐怖感を与え、目的を達成することを原則とします。
これが、中国の「戦わずして勝つ」という戦略であり、我が国が中国の海洋進出に対処するためには、この「戦わずして勝つ」という戦略に対抗する必要があることを指摘させていただきました。
■海上民兵の問題
昨年9月に発表された米国防総省の年次報告には、「第3の海軍」といわれる海上民兵について、「戦わずに中国の政治目標を達成する強制的な活動で、主要な役割を果たしている」と断定しています。
私は、むしろ、軍事衝突を避けるための戦略的手段として、海上民兵で武装した漁船群を活用していると言った方が正確だと考えています。
もちろん、海上民兵は定期的に軍事訓練を受けていて、自動小銃(AK-47)と対戦車榴弾発射機(RPG-7)だけでなく、中には船舶への攻撃用に、携帯式防空ミサイルシステムや携帯式対戦車ミサイルシステムまで保有しているものもあると言われています。
しかし、そうした武装があっても、中東を航行するタンカー等が海賊対策用に武装することもあるように、民間船であることに変わりはありません。
従って、漁船から攻撃を受けることなく先制的に武力攻撃すれば、国際的な非難はまぬがれず、中国側に正規軍を投入する格好の口実を与えることになります。
従って、中国の戦略に乗らないためにも、海上民兵が搭乗している漁船への対応は、国際法上、軍隊とみなされる自衛隊ではなく、警察機関である海上保安庁に任すべきだと考えているかについて、政府の考え方を聞かせていただきました。
■海警局巡視船の問題
海上民兵で武装した漁船の周辺には、中国海警局巡視船が警戒監視しているのが通例で、海警局巡視船の多くは機関砲や対空砲で武装していて、なかには海軍軍艦を改装したものまであるとされています。
そうした中で、海警局に武器使用を含む強力な権限を与える海警法が2月1日に施行されたことでさらに緊張が高まり、不測の事態が起きるリスクも増しています。
そこでまず「中国海警法が国際法に違反している」との主張について、海洋に関しては、慣習法も含め国際法の法源はたくさんあるので、海警法のどの規定が国際法に明確に違反していると考えているのか。その際の国際法の法源はどれを指すのか。法文も含めお示しいただきました。
答弁からは「中国海警法が国際法に違反している」と断定して、日本の対応がエスカレートし、結果的に武力衝突の危険性を高めることはないことが確認されたと思います。
海警局は、あくまでも組織としては警察機関であって、その巡視船は「海洋秩序の維持」のために、海上での法執行活動にあたっています。
もちろん、副次的に国家安全保障に資する効果もありますが、「国家主権の防衛」を目的とする軍隊とは根本的に異なります。
ですので、海警局巡視船に対して先制的な武器使用、特に「危害射撃」はすべきではないと考えます。
それに、外国公船は、治外法権が許される特別な存在ですから、これに危害射撃を加えることは、国際社会から戦闘行為と解釈される可能性が大きいいと考えますので、この点についても確認させていただきました。
■軍事的抑止力の問題
このように、中国は、軍事衝突や対中批判を引き起こすことなく自国領域を拡大するため、初めに、海上民兵が搭乗している漁船や海上法執行機関である海警局巡視船を使用し、相対的な能力が劣る相手国に、圧力やダメージを与えるわけですが、その目的を達成するためには、最終的に、圧倒的に優勢な軍事力を投入することを示唆して、戦わずして相手に要求を飲ませることも常套手段としています。
従って、こうした中国の「強制外交」を断念させるためには、中国に、軍を展開して事態をエスカレーションさせたとしても、日本側が容易に引き下がりそうになく、本格的な軍事衝突となっても中国が必ずしも勝つとは限らないと思わせるだけの、防衛省・自衛隊の体制整備が必要不可欠となります。
しかし、我が国の力だけではそれは不可能で、米軍の力をあてにせざるを得ません。
そこで、どのような状況になれば、米軍が介入するのか、様々な状況を想定して、米軍側と調整しておく必要があるわけですが、そのための訓練を含め、現状どの程度、それが進捗しているのかについても伺いました。
■国際的な支持の問題
戦わずして中国の政治目標を達成しようとする戦略に対抗するためには、国際的にどちらが正しいのか必ずしも明確でない事態が生じることを予め想定して、我々の立場に、事前にできるだけ広い国際的な支持を得ておくことが肝要です。
その第一は、同じ事態に直面しているフィリピンやベトナム、インドネシアなど東南アジア各国と国際的連携を図ることですが、東南アジアの諸国は、米中の対立に巻き込まれることを避ける傾向が強いと考えます。
そうした立場を乗り越えることがどこまで可能だと政府が考えているのかについてもお話しました。
尖閣は日本固有の領土であり、中国との間に領土問題は存在しませんので、中国の力による現状変更の試みが不当であると、もっと積極的に訴えていくべきだと考えますので、政府の努力についても質しました。
日本の主張に取って一番重要なのは米国です。
1972年の沖縄返還の際、尖閣の施政権は日本に返還されましたが、米国は台湾の蒋介石総統に配慮し、領有権に関して「中立・不関与」の立場をとりました。
これが中国の領有権の主張と対日攻勢の原動力になってきたと考えます。
この点、2020年9月に、当時の国務長官ヒラリー・クリントンが、尖閣諸島に「安保条約は明らかに適用される」として、同諸島が第5条の適用下にあることを明言したことの意味は、極めて大きいと考えます。
さらに踏み込んだ対応を取ってもらえるよう、米国に働きかけることが必要ですので、我々としてもしっかりと引き続き対応するよう働きかけてまいります。
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衆議院議員 しのはら豪(立憲民主党、神奈川1区)
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