「在日米軍駐留経費について」(外務委員会質疑)3月19日
本日は会派を代表して外務委員会に登壇し、外務大臣、防衛副大臣らと議論させていだきました。
これに先だつ本会議の代表質問(12日)では、まず最初に負担の正当性を取り上げ、「日本周辺の安全保障環境」の厳しさを考慮すれば、我が国の防衛にとって「米軍のプレゼンスを確保することの重要性」に疑問の余地はないことを指摘しました。
もちろん、「日本周辺の安全保障環境」の厳しさは今に始まったことではなく、冷戦時代を通じて、北方の超大国ソ連の脅威に自前で対抗することは不可能であったことは、ご承知の通りです。
その意味では、冷戦終結を経て、日本防衛に果たす米軍駐留の意味が暖昧になった時期もありましたが、94年には、北朝鮮の核ミサイル兵器の問題が顕在化し、翌95年には、台湾に対し中国がミサイルで圧力を加えるという事件が勃発して、改めて、日米同盟の意義が再確認されることになりました。
■「周辺の安保環境」(その1)
現在、我が国を取り巻く安全保障環境を見ると、中国海警局の艦艇が尖閣諸島の接続水域への侵入、あるいは領海侵犯を繰り返している現状が、極めて深刻な事態として広く国民に知られています。
中国は、自国領土だと主張していますので、チャンスがあれば、南シナ海と同様、圧倒的な力を背景に戦火を交えることなく、尖閣を実効支配下に置くことを狙っているものと考えられます。
それを阻止しているのは米軍の存在で、その意味では尖閣諸島に「安保条約は明らかに適用される」として、同諸島が第5条の適用下にあることを明言した意味は大きいと考えます。
しかし、米国は日本の施政下にある尖閣が安保条約の適用対象だと言及しても、尖閣諸島が日本の領土だと明言していません。このことが、実は、中国につけ入る隙を与えているとも言えます。米国としては、台湾の主張に配慮しているわけですが、そのことも含め、慎重に対処すべき問題です。
また、海上保安庁と米国の沿岸警備隊が2月、小笠原諸島周辺で巡視船同士の合同訓練を実施したそうですが、米国の沿岸警備隊がわざわざ日本に来るのは、中国を意識した行動かどうか、海上保安庁に確認しました。
米国の意図がどこにあるにせよ、国際的な連携を広め、深めることが大きな抑止力になると思われます。海上保安庁には頑張っていただきたいと思います。
■「周辺の安保環境」(その2)
米国は現在、台湾海峡や日本周辺がいちばん危ないと感じているようです。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は、3月9日の議会証言で、2027年までに中国が台湾を侵攻する危険性を示唆しました。
なぜ、そこまでの危機認識を米国が抱くのかというと、東アジアに展開する米国の通常戦力が、中国軍に圧倒されている現実があります。そして、状況はさらに悪化する方向にあります。
現在、中国軍の戦闘機は米軍の5倍ですが、25年には約8倍になります。また、25年に中国軍の空母は米軍の3倍、潜水艦は6倍強、戦闘艦艇も9倍に増えるとされています。
また、米国防総省は様々な図上演習を実施してきましたが、台湾海峡をめぐる図上演習ではここ数年、米軍チームがほぼ決まって中国軍チームに参敗しているそうで、しかも18年ごろから、負け方はよりひどくなっているとされています。
もちろん、米軍の総戦力は中国軍をしのぎ、米国の空母は世界全体で11隻を抱え、核戦力でも中国の比ではありません。しかし、米軍が世界の戦力をかき集めて、アジアに持ってくるには長い時間を要するので、中国は米軍が戦力をアジアに移動させる前に、紛争を決着させることを目指しているとされています。
そこで、外務大臣と防衛副大臣に、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が3月9日の議会証言で、中国人民解放軍の建軍100周年となる2027年までに中国が台湾を侵攻する危険性を示唆したことを、どの程度深刻に受け止めているのかお聞かせいただきました。
米側の情報の真意を理解するのは、難しいと思いますが、公の席で述べたということは、中国に対する警告の意味が大きいと考えます。ですから、日本としても、そうならないように手を尽くす必要があります。
■「周辺の安保環境」(その3)
また、極めて深刻なのは、中国は地上配備型の中距離ミサイルを200発近く保有しているとされていますが、INF条約で禁止されていたことで米インド太平洋軍はゼロの状態です。このため有事に小笠原諸島からグアムを結ぶ第2列島線内へ米空母打撃群が入ることは現状では難しく、沖縄の米軍基地を守るのも難しいとされています。
そこで、この地域を担当するインド太平洋軍は、中国軍による先制攻撃を断念させるために、沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って米軍の対中ミサイル網を築こうと計画書を議会に提出したそうです。
米国は対中ミサイル配備に向けて今後、関係国との調整を本格化させるとしていますが、この問題は、財政支援の問題もさることながら、配備地が日本領域内になるということで、辺野古新基地建設以上に地元の理解を得るのが難しいと想像します。
おそらくホスト・ネーション・サポートの協議で米側から何らかの要請があっても、政府は、答えに窮するのではないかと考えますが、現時点でそうした場合、政府としてどのように対処しようと考えているのかについての話を私からさせていただきました。
■「負担の憲法的正当性」の問題
私は本会議代表質問で、日米同盟によって、我が国の自衛隊が盾の役割に徹し、「たとえ自衛のために必須な行動であっても、自衛隊が他国領域内で武力行使を目的とした軍事作戦を展開することを回避すること」ができるのであれば、「米軍の駐留経費をある程度負担することに憲法的な正当性がある」と話しました。その意味で、「日米同盟」と「専守防衛」は、一体のものと考えています。
その上で、「日米安全保障条約によって盾と矛という関係がございます。私どもは、あくまで盾として日米安全保障条約を理解してまいりました。(・・・)私どもは専守防衛という観点からこれを守るということが日米安全保障条約の趣旨であります(・・・)」(2003年1月24日、石破答弁)を認めるのか否かを防衛副大臣に伺いました。
我が党が外交安保政策の原則と考える「日米同盟」と「専守防衛」は表裏一体のものであり、そのためには、日米安保条約によって、日米が盾と矛の役割を分担することが前提となっていることが、これまで一貫した政府の見解でもあったことが確認できたことは嬉しく思います。
日本側がHNSを負担する根拠について質問しましたが、負担に正当性があったとしても、負担額には自ずと限界があります。従って、正当な負担割合をどのように考えたら良いかについても議論をさせていただきました。
まず、日米安保条約第6条に定める、米軍への施設・区域提供義務を受けて、地位協定上は、24条に日本が基地提供や地権者補償などの義務を負う一方、米側がその他の駐留経費を負担することになっています。
ですから、この事実を根拠に条約上の義務を超えてHNSを負担することはおかしい、とする議論もあり得るわけです。その場合、基地の無償提供義務と米軍の日本防衛義務が釣り合っていることになります。
しかし、12日の本会議代表質問で指摘したように、「思いやり予算」は、米国がアジアへのコミットメント継続を約束する見返りとして、実際には、支払われてきたと考えられます。
歴史を思い起こすと、米軍の南ベトナムからの撤退が開始されてまもなく、1971年にニクソン・ドクトリンが発表され、72年には2万の米軍兵力が韓国から撤収しました。75年には、米軍が南ベトナムから全面撤退に追い込まれます。
同時期、坂田防衛庁長官は、国会で「日米の役害分担が必要であり、日米間で協議を開始する」と言明しました。
翌76年には、今日の「専守防衛」につながる基盤的防衛力構想を述べた防衛大綱が策定されましたが、それを受けて、1978年に金丸防衛庁長官が、在日米軍の駐留経費負担の増額、いわゆる「思いやり予算」を始めました。
そして、新たな日米の役割分担を定めたのが、1978年の第一次ガイドラインで、これは、吉田首相が路線を敷いた軽武装の日本を防衛するために米軍の有事来援を保証するための挺子として、冷戦終結まで機能したわけです。
しかし、協定の拡大解釈や「特別協定」で負担してきた「思いやり予算」ですが、額としてどこまでが正当と考えられるのか、米軍の要求のまま「上限」なく負担させられるのではないかと言う懸念が当然、生じます。
この点、うまく考えられていると思うのは、目的は「米軍のアジアへのコミットメント継続」への負担ですが、支払いは、日米地位協定で米国が負担することになっている在日米軍を維持する経費の一部を肩代わりする形を取って、基地従業員の労務費や光熱水費、施設整備費などを負担してきたわけです。
つまり、在日米軍を維持するための米軍側負担経費は、極めて具体的に米国側予算として定められているわけですから、その上限は、目に見えます。例えば、米政府の18会計年度に示された、在日米軍の米側経費は、約53億ドル(約5565億円)です。それを全額日本側が負担すれば、負担割合は100%になると考えられます。
また、約53億ドル(約5565億円)の大半を占めるのが、人件費の約29億ドル(約3045億円)で、以下、作戦維持費、基地建設費、米軍家族の経費となっていますが、どう考えても、人件費や作戦維持費を外国に依存するのは、まるで米軍が日本の傭兵のようになるので、米国は避けるでしょうし、また、基地建設費も、軍事作戦に直結する性格を持つ施設の整備はMILCONと呼ばれる「軍事建設予算」で賄われることになっていますので、今以上に、負担する余地は、余りないのが現状ではないでしょう。
ここで確認したいのは、在日米軍駐留経費負担の問題は、日米が実際に負担している額が具体的に存在し、それぞれの額を足したものが全体額で、日本の負担の限界もその全体額を超えることは論理的にあり得ないことです。
その意味で、「思いやり予算」は、極めて巧妙に考えられた仕組みになっていると考えます。ですから、米側から新たな増額要求があっても、この枠組みの中で議論することが最低限の条件であることを肝に銘ずべきだと思います。
■「負担割合」の問題
防衛省の試算によると、2015年度の日本側の負担割合は86.4%とされ、韓国やドイツなど他の同盟国に比べて突出して高いとされています。この時の米国側負担額は、米国資料によると、55.586億ドル(6114億円)です。
日本側の負担額は、地位協定上の義務的経費と思いやり予算を合計すると、5771億円、これに含まれない特別協定上の「訓練移転費」を足し算しても5835億円ですが、この額では、全体額の48%にしかなりません。
また、米側資料では、2002年度、日本は44億1千万ドル、74.5%負担しているとされています。日本側の資料では、地位協定上の義務的経費と思いやり予算の合計額が6392億円で、訓練移転費を足して6401億円になりますが、当時の為替レートがおよそ1ドル120円とすると、53億ドルで、44億1千万ドルを大きく上回ることになります。
そこで一体、どのように計算すれば、86.4%、あるいは74.5%と言う数字が出るのか、根拠を問いました。計算方法を適切に答えない理由がどこにあるのか。きちんとした説明がなければ、国会を軽視していると指摘されますので、しっかりとした情報を国民に対し開示していただければと思います。
さらに、こうした負担割合で、負担の限界を考える際の問題ですが、例えば、地位協定で無償提供されている基地の費用に関して、米軍基地として提供している土地の賃借料は、民有地あるいは、県有地や市町村有地の場合、一般的には国有地に比べ負担は大きくなると考えられます。
特に、民有地が多い沖縄県では、縄復帰に際し日本政府は,地主対策として,軍用地料を従前の4倍にも引き上げ、以後毎年着実に引き上げられた結果、 2007年度の軍用地料総額は復帰時の123億円の6倍以上、 777億円にもなりました。もちろん、その後も軍用地料は一貫して上昇を続けているわけですが、こうした負担額を他国と比べてみてもあまり意味がありません。このように、負担割合を他国と比べることに限界があるわけですが、交渉では、どのように負担割合の数字が取り上げられているか。
その他、費用項目で比べると、日本は、米軍の施設整備費、従業員労務費、光熱水費を負担していますが、韓国は、光熱水費の負担はありません。ドイツ、イタリアを含めNATO諸国は、その全てについて米軍負担となっているようです。日本側は、こうした点をも交渉に反映させているかも大切です。
■「今後の交渉姿勢」の問題
米政府は特別協定の1年延長を受け、今後は駐留経費負担の協議と並行して、日米の防衛能力強化や日本の貢献策、米軍の再配置について日本政府と議論を深める考えと報じられています。
特に、海洋進出を強める中国を警戒した島嶼防衛や、サイバー攻撃への対処能力、宇宙を活用したミサイル防衛体制づくりなどで、日本側に新たな役割を要請する可能性がとり沙汰されているとのことです。
これに対して、日本側は駐留経費とは別に、100を超す小型衛星を打ち上げ、ミサイルの探知・追尾や艦船の監視、情報通信に使う「小型衛星コンステレーション」計画に協力することを検討していると報じられています。総事業費は1兆円以上とみられるので、日本が一部の衛星の生産や打ち上げを担えば、米軍の負担を減らすことになるとしています。
しかし、私は、駐留経費とは別に負担を増やすことは、実質上、上限額の無い交渉になる危険性があると考えます。既に、SACO関係経費、米軍再編経費は、駐留経費とは別に支払われ、必要額に上限を定めることは難しくなっています。最も、沖縄対策費としての性格が大きいので、国民的な理解は比較的得やすいように思いますが、「小型衛星コンステレーション」計画には、負担額に国民の納得を得るのは、至難の技だと考えます。
もう一つ考えて欲しいのは、増額要求にこたえるために新しい費用項目を別枠で設けるのは、本末転倒だということです。イージス・アショアの導入にせよ、F35やE2dの追加購入は、米側の要求に答えることが第一の目的で、費用対効果は二の次になった典型例です。
「小型衛星コンステレーション」計画も、今実現可能な技術ではなく、研究開発を待たなければなりません。その意味で、費用対効果はそっちのけの計画ではいけません。
私は、あくまでも、駐留経費交渉の枠内で、増額要求を受け止めるべきだと考えます。つまり、現行の在日米軍機能の一部を自衛隊が引き受けることで、米軍の負担軽減を図るようにすべきです。12日の代表質問でも、財政的貢献と人的貢献をセットで交渉することが大事だと申し上げましたが、正に、そうすべきだと考えます。
もちろん、憲法上の制約がありますので、慎重な検討が必要ですが、仮に、現状の自衛隊兵力を超えない範囲で自衛隊が在日米軍の機能を代替していくことができれば、大きな成果になると考えます。
日米同盟における日本の貢献が、財政に偏っているとの批判が米側から提起され続けてきたわけですから、こうした提案は、極めて理に叶ったものであると考えます。盾と矛の役割分担は守りつつも、双務的な関係に持っていくチャンスです。
報道によれば、トランプ大統領が、在日米軍基地の施設整備に関する約430億円の予算を含む国防総省予算をメキシコ国境との壁の増設に転用することを決めたことで、その費用補填の問題がバイデン政権に引き継がれるということです。
特に、メキシコ国境との壁の増設費用に転用される予算に、米領グアムの施設建設費が含まれているので、沖縄県に駐留する米海兵隊1万9000人のうち、4000人をグアムに移転する計画が遅延するのでは無いかとされています。
こうした経費のつけを日本が追加負担することは、本来あるべき姿では無いと考えます。なお、トランプ政権下で中断していた、韓国との駐留経費負担交渉がようやく妥結し、2021年について前年比13.9%増に落ち着いたと報じられています。これは、実務者間で合意した前年比13%に近く、常識的な線に治ったのでは無いかと思っています。
このことを念頭に政府が評価し、それがどのように日本の交渉に影響すると考えてるのかというお話もさせていただきました。バイデン政権が、同盟重視の方針をとっている証明であると思っていたわけですが、今後の駐留経費負担交渉も常識の範囲内で妥結する良い先駆けになるよう期待しております。
■「労務費」の問題
12日の代表質問でも、最後に、在日米軍駐留経費の負担の目的が「日米同盟の強化」にあるならば、米軍駐留の負の側面に対処することも国民の支持を確かなものにするために重要であり、その意味で、そうした諸問題の解決を在日米軍駐留経費負担に関する日米協議の俎上に上げるべきだと申し上げました。
そこで、労務問題も取り上げました。現状を申し上げると、雇用主であるはずの防衛省は共同管理者でありながら、その立場は弱く、雇用主としての主張も無視されがちです。
そのため、被雇用者は、板挟みにあって、権利侵害があっても十分に対処してもらえない状態にあります。労務の決定権はすべからく米軍側にあり、日本側は、給与を全額負担させられているのに、どんな些細な決定権限もありません。
そこで、政府に置かれては、こうした状況を少しでも改善するために、決定権限の一部でも委譲してもらい、日本の労働慣行が少しでも反映されるように、労務問題を在日米軍駐留経費負担に関する日米協議で取り上げて欲しいと考えています。
その中で、一つ「ミッション・エッセンシャル(ME)」について政府の見解をお聞きしました。
これは、基地がテロや化学兵器・生物兵器・放射能を伴う危険にさらされたとき、基地従業員であるあなたは出勤しなければなりませんよ、そういう危険な場合でも理由なく出勤しなかった場合は解雇を含む処罰の対象になるかも知れませんよ、という書類で、基地従業員は、これに署名を求められます。
確かに基地従業員という立場にありますが、公務員でも自衛隊員でもなく、単なる一民間人に過ぎません。
しかもこのMEという規程は日米間の合意事項でも労使協定でも地位協定でもなく、在日米軍指令36-502という指令書が根拠になっています。
おそらく医療現場でも、同じような立場に立たされることがあるかと想像しますが、こうした場合には、どのように権利が保証されるべきか、政府の見解を問いました。
政府としてしっかりと対応していくとのお話がありましたが、こうした不条理は、許されるものでなく、何らかの対策が取られるべきだと私も考えていますので、引き続きしっかりとフォローしてまいりたいと思います。
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