本会議で登壇 「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」について(3月12日)

国会・国政

 

会派を代表して本会議で登壇し、我が党の外交安全保障政策が、いかに平和主義を原則とする憲法に適合しながら、同時に、現実的なものであるかを示すため「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」についての議論を、外務大臣、防衛大臣らとさせていただきました。

 

今回議論となりました在日米軍駐留経費負担、HNS(ホストネーションサポート)は、我が党が外交安全保障政策の基軸と考える日米同盟の最重要と言える論点でもあります。

 

1)米軍駐留経費負担の正当性
我々は「専守防衛」と同時に「日米同盟」を我が国の外交・安全保障政策の基本と考えています。

 

特に近年、日本周辺の安全保障環境が厳しさを増していることを考慮すれば、我が国の防衛にとって、日本における米軍のプレゼンスを確保することの重要性に疑いの余地はありません。

 

戦後、我が国の防衛予算が、対GDP比で概ね1%を下回る水準で維持できたのも、米軍の存在が大きな力になったものと考えています。

 

さらには、我が国の自衛隊と米軍が盾と矛の関係、つまり憲法との関係で、たとえ自衛のために必須な行動であっても、自衛隊が他国領域内で武力行使を目的とした軍事作戦を展開することを回避することが従来の政府方針であることを想起すれば、米軍の駐留経費をある程度負担することに憲法的な正当性があるものと考えます。

 

従って、在日米軍駐留経費の負担に関して最も大切なことは、米軍の抑止力、特に、矛としての信頼性を確かなものとすることであり、それによって日米同盟が最大の効果を発揮できるようにすることです。

 

最近、問題なっている敵基地攻撃能力の問題も、ミサイル攻撃に対する米軍の抑止力としての信頼性が確かなものであれば、起こりようがありません。
また、尖閣諸島を巡る問題も、米軍が同盟の役割を果たす姿勢を明確にすれば、事態が大きく改善されるのではないかと考えています。

 

こういった観点から、政府は米国とこれまで、在日米軍駐留経費の日本側負担に関する協議を重ねてきたわけですが、支払うことを当然とはせず、日本防衛に果たす米側の役割をどのように確認してきたのかについて外務大臣に伺いました。

 

また、単に抽象的に確認したというのではなく、その信頼性を確保する具体的取り決めについて、例えば、特定の事態について大統領が条約上の義務を果たす意思を明確に示すとか、あるいは在日米軍が尖閣諸島での有事を想定した対応をとるといった「約束」を取り付ける努力がなされてきたかについても質問しましたが、明確な答えはありませんでしたので、やっていないということでしょう。

 

また先日私が安保委員会で
「敵基地攻撃能力を保有するには、米国の信頼性に疑問があって、頼りにできないことが憲法上の要件であると考えます」
と述べた際、岸防衛大臣から
「いかなる場合に他に手段がないと認められるかを含めて、我が国としていかなる状況において講ずるいかなる措置が自衛範囲に含まれるかということについては、実際に発生した武力攻撃の規模や態様に即して個別具体的に判断されるべきものであって、例えば、米軍等の他国の支援の有無といった限られた与件のみをもって判断できるものではない」
と答弁されたことについて、これは、自衛隊と米軍との役割分担を、従来の盾と矛の関係として説明してきた政府見解を根本的に否定する新答弁だと考え、改めて本会義の場でその意図を質しました。

 

2)負担割合の問題
2021年度以降の在日米軍駐留経費の日本側負担を決めるための日米協議が、昨年の11月にトランプ政権との間で本格的に開始されました。
ボルトン元大統領補佐官は著書の中で、在任中の2019年に現行水準の4倍にあたる80億ドルの負担を日本側に打診したと明らかにしています。

 

実際の協議では、こうした数字を米側が持ち出すことはなかったとされているようですが、それでも2倍は超えていたようで、これまで積み上げてきた交渉の論理がまったく通じなかったのではないかと思います。

 

従って今回、米側の政権交代を機に、3月末で期限切れとなる現行協定を1年延長することに合意し、2022年度以降の4年分の負担額については、腰を据えて今年改めて交渉し、年内の合意を目指すことは妥当な判断だと考えます。

 

防衛省の試算では、2015年度の日本側の負担割合は8割を超え、韓国やドイツなど他の同盟国に比べて突出して高いと言われています。

 

そのために、我が国は、日米地位協定で米国が負担することになっている在日米軍の駐留経費を日本が肩代わりする形で、労務費や光熱水料費を負担してきたわけですが、この方式では費目をこれ以上増やす余地はないと考えますが、改めて我が国の負担額についても伺いました。

 

さらに、米政府の2018会計年度に示された、在日米軍の米側経費は、約53億ドル(約5565億円)で、その内、一番の人件費が約29億ドル(約3045億円)と大半を占めており、以下、作戦維持費、基地建設費、米軍家族の経費となっていることを考えると、それを日本側が負担することは、正当性に乏しいと考えます。

 

この点についても、政府も同様な見解であるのか、あるいは違う意見を持っているならと説明を求めましたが、正面からの答弁はありませんでした。

 

3)日本側負担の交渉原則
地位協定を根拠とする我が国の負担は限界に達しています。
他方で、米国が負担増を求める流れは変わらず、バイデン政権も日本側に増額を求めていると言われています。

 

そこで、改めて「思いやり予算」の歴史を紐解くと、在日米軍の駐留経費について、日本が自発的に経費負担の増額に踏み切る理由を、当時の金丸防衛庁長官は、カウンターパートのブラウン米国防長官に対し、米国がアジアへのコミットメント継続を約束する見返りであると説明していることに驚かされます。

 

つまり、日米地位協定で日本側が本来負担する額を超えて、米国が負担することになっている在日米軍の駐留経費までも日本が肩代わりする本来の意図は、今日流に言えば、インド太平洋地域の平和と安定にコミットしている米第7艦隊を含む在日米軍の役割を評価し、それに応分の負担をすることにあったと考えます。

 

事実、特別協定に基づく「思いやり予算」も、イラン・イラク戦でペルシャ湾の安全航行が問題となり、米側が日本に「応分の負担」を要請したことが起源となりました。

 

政府はその要請に応えるため、1988年の通常国会において、日本人従業員の退職手当など8手当を全額負担することにしたわけです。

 

同じ事情は、1990年の湾岸危機でも再現され、日本政府は、国際協調行動への協力とは別枠として、日本人従業員の本給や光熱費を日本側が新たに負担する1991年の特別協定を締結しました。

 

注目すべきは1997年に新ガイドラインが締結され、以後、周辺事態法などが整備されたことをきっかけとして、2001年を起点とする第4次特別協定以降、一転して思いやり予算額が減少に転じたことです。
そしてこの減額傾向は、第7次協定が終了する2015年3月まで持続しました。

 

私は、この思いやり予算額が減少に転じた理由は、日本が財政的な支援だけでなく、自衛隊による人的な貢献にも踏み込んだことが一因だと考えています。
従って、2022年度以降の4年分の負担額を交渉するに際しては、人的な貢献についても評価に含めることを交渉原則として、財政的負担額を算定すべきだと考えます。

 

2016年4月から5年間の支援額を定める第8次協定でも、人的貢献が考慮されたと考えます。しかし、これまでの減少傾向から再び、財政負担が増加に転じました。

 

これには、どのような理由があったのでしょうか。
人的貢献にも言及しながら、理由を明らかにしていただくよう質しましたが、こちらも直接的な答えはなく、交渉姿勢の弱さの表れではないかと思うと大変残念です。

 

4)米軍駐留に伴う国民負担を軽減する必要性
在日米軍を支援する関連経費には、地位協定第24条第2項に基づいて支払われる義務的な経費、及び、「思いやり予算」とは別に、SACO関係経費や、沖縄の米海兵隊のグアム移転費を含む米軍再編関連経費があります。

 

その米軍再編関連経費の額は、2021年度には2044億円にもふくれ上り、思いやり予算とほぼ同額になっています。

 

実は、SACO関係経費と米軍再編関連経費は、米軍の日本駐留がもたらす負の側面、とりわけ、米軍基地が集中する沖縄への対応が極めて大きな問題になっていることを物語っています。

 

そこで、過重な米軍基地負担に苦しむ沖縄県は、在日米軍にさまざまな特権を認める地位協定の改定を長年にわたって求めてきました。
また「基地問題は一都道府県の問題ではない」という沖縄の切実な訴えを受け、全国知事会は、日米両政府に地位協定の抜本的な見直しを提言しています。

 

まず、再三の抗議にもかかわらず日本各地で繰り返されている米軍機の低空飛行訓練について、提言は、時期やルートを事前に情報提供するよう求めるとともに、航空法や環境法令などの国内法を米軍にも原則適用することや、事件・事故発生時の自治体職員の立ち入りなどを地位協定に明記するよう要請しています。
また、飛行場周辺における航空機騒音規制措置についても改善を求めています。

 

実際、ドイツ、イタリアでは、米軍機の事故を機に、協定の改定や新協定の締結を実現し、自国の法律を米軍にも適用しました。

 

また、騒音軽減委員会や地域委員会といった、地元自治体の意見を米軍に伝える仕組みも整備されているそうです。

 

原則として国内法が適用されず、地域住民の声も届かない日本とは大違いですので、せめてこの問題をドイツ、イタリア並にすることは喫緊の課題だと考えます。

 

在日米軍駐留経費の負担の目的が「日米同盟の強化」にあるならば、国民の支持を確かなものにすることも最重要事項であり、その意味で、日米地位協定の見直しを、在日米軍駐留経費負担に関する日米協議の俎上に上げるべきだと考えますが、政府からはこういった交渉をするかどうかという答弁はありませんでした。

 

さらに、現下、最大の問題は、民意を無視して強行する辺野古の新基地計画です。
いつ完成するか、本当に完成するのかすら分からず、莫大な国費を投入して工事を続けることは、当面の大きな課題となっている中国に対する安保政策として好ましいとはとても言えません。
バイデン政権の下で、インド太平洋軍が新たな対中戦略を提起している今こそ、両政府が沖縄県を交えて、打開策の検討に乗り出すチャンスだと考えます。

 

沖縄の負担軽減が日米同盟の強化に不可欠なことは、日米の共通認識と考えます。
政府においては純粋に戦略的な観点から辺野古の新基地計画の再検証を行うことを、日米協議の場で提起するよう、質疑の最後に、誠心誠意要望いたしました。

 

5)この日の質疑について

この日の質疑では、在日米軍駐留経費負担を巡る基本的な問題についての考え方を述べ、日米同盟を外交・安全保障政策の基軸と見なす立憲民主党が、平和主義を基本原則とする日本国憲法を具現する歴史的な政府見解を、紛れもなく正統に引き継ぐ政党であることお示しさせていただきました。

 

国民の皆様におかれましては、我が党が平和主義を堅持しつつ、政権を担うに足る現実的な安全保障政策を持つ政党であることをご理解いただくとともに、我が党の外交・安保政策に国民各層の幅広いご支持をいただき、まさに現実の政策となるよう政権交代に向け努力することをお約束し、本会義での議論を終わらせていただきました。
引き続き頑張ってまいります!

 

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衆議院議員 しのはら豪(立憲民主党、神奈川1区)
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