安全保障委員会 質疑報告(宇宙状況監視 SSA についてなど)4月7日

国会・国政

 

4月7日は安全保障委員会にて質疑をいたしましたのでご報告いたします。

冒頭
新型コロナウイルスで亡くなられた皆様に哀悼の意を表しますとともに、罹患され今なお闘っておられる多くの皆様の一日も早いご快復をお祈り申し上げます。

 

1.自衛隊の新型コロナ対応について

感染拡大防止のため、「災害派遣」名目でクルーズ船などにおいて行われた自衛隊の活動は、3月16日にひとまず終了しました。
感染症対策としては過去最大規模で、46日間で述べ約4900名の自衛隊員が4都県に送り込まれました。
規模もさることながら、そうした中でも活動に当たった自衛隊員に一人も感染者を出さなかったことは賞賛したいと思います。

 

その後も先月3月28日からは水際対策強化のため「自主派遣」の形をとった成田空港での検疫支援、今月4月3、4日には宮城県と長崎県からの要請で患者さんの搬送や検査支援のため派遣しています。

 

そして、本日の質疑の後、改正新型コロナウイルス等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に発出する予定です。

 

政府に対しては、法改正時に約束した「国会への事前報告」をしっかり守っていただき、与野党の理解を得た上での発動としていただくことを強く求めました。

 

緊急事態宣言発動後も、自衛隊による感染拡大防止のための災害派遣の役割は大変重要になります。
1)他省庁、自治体、医療関係者等との任務分担、指揮命令系統の確立
2)感染者の宿泊支援、生活物資の搬入仕分け
3)共同区画の消毒活動
4)実際の医療支援
5)陽性患者の輸送支援
こうしたものを支える自衛隊の装備、体制の充実と人員の充実が必要だと考えます。

 

自らが感染しないことと同時に、自らが感染者となって他者にウイルスを拡散させないことが求められるわけですが、そうしたことも含め、緊急事態宣言にあたり自衛隊と防衛省はどのように臨まれるのか、大切なことですので議論させていただきました。

 

2.宇宙状況監視(SSA)について
●宇宙状況監視(SSA)
「防衛省設置法の一部を改正する法律案」は、宇宙・サイバー領域における優位性の獲得に必要な部隊の新編・拡充をはじめとする、防衛省・自衛隊の体制整備を行うものです。
その主眼は、運用を終えた人工衛星のロケット部品や破片など、地球を周回する「宇宙ゴミ」が現役の人工衛星に衝突しないように常時監視する宇宙領域専門部隊を、航空自衛隊に新編するということです。
この活動は宇宙状況監視(SSA)と呼ばれますが、このSSAには、宇宙ゴミだけでなく、地上から人工衛星に向け発射するミサイル、衛星攻撃衛星(キラー衛星)、レーザー光線などの指向性エネルギー兵器、電波妨害(ジャミング)や、電磁パルスを利用する兵器といった、対衛星兵器による攻撃から人工衛星を守る役割もあります。

 

●自衛隊による宇宙の利用原則
まず、人工衛星やロケットの開発・利用は平和目的に限るとした1969年の国会決議によって、自衛隊の宇宙利用は実質的にできない状態が続きました。

 

これを変えたのが1985年の政府統一見解です。
米海軍が所有するフリーサット衛星を自衛隊が使用する際に出されたこの見解では、米海軍衛星経由の通信は市民が衛星電話や衛星放送を利用するのと変わらず、国会決議に反する宇宙の軍事利用と解するには当たらないという判断を示した上で、「利用が一般化している衛星およびそれと同様の機能を有する衛星は、自衛隊による利用が認められる」としたものです。
しかし同時に「自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めない」とも述べています。

 

その後、2008年に制定された「宇宙基本法」は、宇宙開発利用を「国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資するよう行われなければならない」と規定し、安全保障分野での宇宙利用ができるように道を開きました。

 

そこで、1985年の政府統一見解に明記された「自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用することを認めない」とした規定は現在でも有効であると考えて良いか、まず政府見解を尋ねました。

 

攻撃衛星を地球上の周回軌道上に配備することは、宇宙からいつでも他国を攻撃できることになるので、明らかに「専守防衛」の枠を超えています。
従って、自衛隊がそうした衛星兵器を開発・保有・運用することは憲法違反と言わざるを得ない、という議論が出てくることも指摘いたしました。

 

●衛星攻撃衛星の監視
地球を周回する宇宙ゴミを監視する場合、その予測軌道上に人工衛星があれば、その衛星の軌道を変更すれば済む話です。
ところが、監視相手が衛星攻撃衛星(いわゆるキラー衛星)の場合、攻撃を避けるためのなんらかの措置を取らなければ、監視自体が意味をなしません。
そこで、政府は2020年度中に、有事の際に他国の軍事衛星を無力化させる衛星(妨害衛星)の導入を正式決定し、2020年代半ばにも打ち上げたい考えであると報じられています。

 

また、政府は有事の際、地上から外国の衛星や空中警戒管制機(AWACS エーワックス)を電磁波で妨害する装置の開発も進めたい意向とのことですが、これは、自衛隊の宇宙利用として正当なものと考えられるか伺いました。

 

衛星攻撃衛星(キラー衛星)であればいつでも攻撃できるわけでなく、当該の衛星攻撃衛星が我が国の衛星への攻撃を開始したとき、すなわち「着手事態」になって初めてその攻撃を妨害することができるということです。「その恐れがあるとき」では先制攻撃になってしまうことに問題があります。
この点も議論の必要性を指摘させていただきました。

 

「恐れがある事態」と「着手事態」を明確に見分けるだけの壮大な諜報システムを我が国が持つことは不可能で、現実には、米軍のシステムに依存せざるを得ません。
とすれば、実際上、米国が最終的な決定権を持つことになり、「自国防衛」と矛盾する事態も起こり得る危惧についてもお話させていただきました。

 

また、こうした自衛隊による妨害行為に対し、妨害を受けた国がなんらかの反撃を行った場合、国際法上どのような評価を受けるかを考えることも重要です。
例えば、国際法上、「妨害行為」が「破壊行為」とされる危険性もあるように思います。
どの程度までなら、あるいはどのような条件であれば、「破壊行為」にならないと考えるのか。

 

キラー衛星による我が国衛星への攻撃は、明らかに「武力行使」である以上、それを妨害する行為も当然に国際法上の「武力行使」と評価されるでしょう。そして、妨害を受けた国が反撃するのも国際法上の認められた権利の行使と考えられるのではないか。
従って「妨害行為」そのものが「武力行使」と評価される以上、それが物理的な「破壊行為」を伴うか否かは、国際法上、無意味であると私は考えています。

 

●宇宙状況監視に関する米軍との協力
宇宙ゴミの監視は、JAXAが2004年から岡山県内にあるレーダーと光学望遠鏡の施設2カ所で実施していましたが、宇宙領域専門部隊の新編は、その観測データを世界的な宇宙状況監視の中核組織である米軍連合宇宙運用センター(CSpOC シースポック)に提供することで、日米両政府が2014年5月に合意したことに始まります。

 

その背景には、オバマ政権が2010年に「国家宇宙政策」 (NSP)を発表し、宇宙戦略を自前主義から友好国や民間事業者と連携する姿勢に転換したこと、さらには、米軍の利用する宇宙監視施設がアジア地域に余りなかったことがあります。

 

いずれにせよ、その結果、合意直後の2014年8月に「宇宙開発利用に関する基本方針」が5年ぶりに改定され、宇宙状況監視を目的とする自衛隊の専従組織の設置を検討する旨が明記されました。
そして2019年3月、日米両政府は2023年度から自衛隊と米軍の宇宙状況監視 (SSA) システムを連結させ、リアルタイムで他国の衛星やスペースデブリなどの情報を共有すると共に、将来は他国衛星の攻撃などに備えた相互防護体制の構築を目指すことに合意したと報じられています。

 

ここで注目したいのが、この合意は、2019年1月に発表されたトランプ政権による「ミサイル防衛見直し」(MDR)が反映されていることです。
そこに盛り込まれているのは、ロシアが2019年に配備した極超音速ミサイルへの対抗策である、レーザー兵器を搭載した衛星など宇宙配備型の迎撃システムの実現可能性について、調査に乗り出すとの方針です。

 

このことから、米国は、「武力行使を含むシステム」として宇宙状況監視を運用しようとしているわけで、これに自衛隊が参加することは、明らかに「宇宙の軍事利用」にあたると私は考えます。政府の見解を問いました。

 

また、自衛隊と米軍の宇宙状況監視 (SSA) システムを連結させるということは、米軍の世界システムに自衛隊のシステムが組み入れられたことを意味します。これでは指揮権の独立も実際上あり得ません。

 

他方で、米軍のインフラを活用しないで我が国の独立を守ることも不可能です。最終段階では、必ず我が国の国益が優先される仕組みを整えておくことが求められることも、強く指摘させていただきました。

 

●米軍連合宇宙運用センター(CSpOC シースポック)
米軍は衛星への攻撃を抑止するため、米軍連合宇宙運用センター(CSpOC シースポック)をカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地に創設しました。
そのCSpOCには、2019年7月現在、英国やカナダ、オーストラリアなどが人員を派遣しています。
つまりCSpOCは、米軍とその同盟国・友好国軍との間で宇宙領域に関する情報共有を行う機能を担っているわけです。
そこで、日本も航空自衛隊に宇宙空間の状況を常時監視する宇宙領域専門部隊を新設した際にはCSpOCに連絡官を派遣するかどうかを伺いました。

 

河野大臣は「現時点では決めてない」とだけ答え、議論を避けました。それでは議論にならないので、私からは再答弁、再々答弁を求めました。
河野大臣は手も上げず、委員長の指名がなくても、自席からこれ以上質問してほしくないという態度ありありの発言を行い、そのあまりの逃げっぷりに、この様子を見ていた政府参考人の方々も笑っていたのが印象的です。

 

なぜこの問題が大切かといえば、CSpOCは同時に、宇宙状況監視を含む宇宙における「軍事作戦」を遂行する機関でもあるので、憲法違反になる可能性もあると考えるからです。
参加にあたってどのような対策をするのか、その説明と議論を求めているのに逃げ回られたら委員会質疑の意味がありません。

 

そこで私から、CSpOCに参加して国際社会の一員として軍事的な脅威に共同で立ち向かうことは積極的に行うべきであるが、CSpOCは米国の一機関としてトランプ政権のアメリカ第一主義を担う存在でもあるという現実を忘れるべきでない、米国が軍事攻撃を選択しても、日本としてはあくまでも平和的解決にこだわる余地がなければ、憲法違反と言わざるを得なくなる、と指摘しておきました。大臣が理解したかどうかは分かりません。大変残念です。

 

3.グローバルホークについて
●運用部隊の構成
法案には、2021年度からグローバルホークの運用開始に向けた諸準備を行う部隊を、航空自衛隊に新編するとされています。
グローバルホークの一括購入を決めたとする2014年の新聞報道では、「陸海空共同の部隊を新設」とありますが、本格運用では「共同の部隊」になると報道されています。

 

●FMS調達
グローバルホークは、支払い金額も納入条件も米側の都合が全て優先されるFMS調達の典型事例と考えられます。
すでに指摘されているように、2014年の選定段階で米政府は、3機を20年間使って廃棄するまでのライフサイクルコストを「約1700億円」と説明していましたが、機種選定が終わると「3269億円」に上方修正しました。

 

2017年4月には、3機の機体と地上装置で計「約510億」と見積もっていた価格を「約630億円」まで値上がりすると連絡し、同時に、20年3月と見込まれていた日本への最初の配備も「21年7月にずれ込む」と通告してきました。

 

2015年10月に発足した防衛装備庁は、通達で、高額装備品の費用が見積りより15%上昇したら計画の見直し、25%上昇すれば中止を検討する、そのように義務づけているわけですが、約23%増にも関わらず、結局、見直しもなく購入しました。
この事実は、通達はあってもFMS調達は適用除外で、必ずしも守らなくては良いという悪しき前例を残したことになります。

 

力関係で、実際上、米国以外の兵器を購入できないということがこのグローバルホークで明らかになったのであれば、F2後継機を日本主導で開発する計画も、かつてのFSXと同様、蓋を開けてみれば、米国主導になることが危惧されます。

 

●運行上の制約
その上、グローバルホークには運行上の制約が課されています。
最大の問題は、気象条件が厳しい高高度を飛ぶため、点検整備に時間を要し、「1機あたり週2、3回飛ぶのが限度」と言われていることです。
このため、緊急時において一部の機体が長期整備中なら、監視体制に穴があく可能性もあるのではないでしょうか?
それでもなぜ購入不可にならなかったのか不思議です。3機を一括購入した合理性はどこにあるのでしょうか。

 

●センサー機能の制約
「目」の部分にあたるセンサー類も、内陸部の画像のほか艦艇の動きをつかむ機能や相手の電波情報の収集も可能とされていたのですが、当面は画像用の機能の提供だけにとどまる見通しとされています。
こうした条件で運用する価値はどこにあるのでしょうか。なぜ、こうした条件を受け入れたのでしょうか。
こうした制約が当初から分かっていたのであれば、とても買う価値があるとは考えられないわけです。

 

●ブラック・ボックスによる高額な維持管理費用
また、機体の大半の技術が開示されないため、米企業の技術者40人が常駐することになります。その生活費約30億円を支払わなければなまりません。定期的な本格整備では機体を米本国に送り返す必要もあります。
有事を目前にした時、米企業の技術者40人が突如本国に帰るという事態が絶対起こらないと誰が言えるのでしょうか。

 

さらに、飛行中に集めたデータを衛星通信経由で地上に送る際は、そのデータ処理の一部を機密上の理由から米側に委託することにもなっています。

 

そのため、維持管理費用が毎年約130億円(20年で2600億円)もかかると言われているのです。これは、相手が米国なので何も文句が言えず、黙って買うしかないうことなのでしょうか。
それとも、高額な維持管理費について他に合理的な理由があるのでしょうか。

 

以上のように日本の安全保障は大きな問題を抱えています。
引き続きしっかりと議論してまいります。
皆さまのご指導、何卒よろしくお願い申し上げます。