自衛隊の中東派遣問題について(安全保障委員会質疑を踏まえて)11月15日

国会・国政

安全保障委員会質疑

 

11月15日、安全保障委員会質疑「自衛隊の中東派遣問題」について、35分の質疑の機会をいただきました。
その内容も踏まえご報告いたします。

 

イラン核合意離脱
政府は本年10月18日、中東へ自衛隊艦船等を派遣する検討の開始を発表しました。
背景に米トランプ政権が昨年5月、一方的に国際的な「核合意」から離脱した事件があります。

 

その後、米国は経済制裁を復活させただけでなく、新たな制裁を科しつつ国庫収入の約4割を占めるイラン産原油の輸出を全面的に禁止しました。
軍事的にも米海軍の原子力空母ジョン・ステニスを中心とする空母打撃群をペルシャ湾に入れ、核弾頭を運用できるB52戦略爆撃機をカタールの基地に投入するなど、イランを対話に引き出すため最大限の圧力を掛け続けています。

 

しかし、イランの最高指導者ハメネイ師は対話を拒否し、対話の糸口さえ見つかりません。
緊張は高まるばかりで、ホルムズ海峡周辺で石油タンカーなどが攻撃を受ける事案等が続発しています。

 

一触即発の危機的状況、米国とイラン
この偶発的な武力衝突を招きかねない一触即発の危機が続く中、6月20日、イスラム革命防衛隊が、同国南部ホルムズガン州のオマーン湾近くの「イランの領空内」で、米海軍の無人偵察機グローバルホーク(RQ‐4A)を撃墜しました。
これに対しトランプ大統領は、米軍による報復攻撃を承認しましたが、直前に承認を撤回し幸い犠牲者を出す事態には至りませんでした。

 

しかし米軍は、イラン軍のミサイルやロケット発射を制御するコンピューターシステムへサイバー攻撃を実施、7月にはイランの無人偵察機を同海峡で撃墜したとされ、本格的な武力衝突に至ってないにせよ、米国とイランの間には敵対的行為が常態化しています。

 

両国の間はすでに「国際的な武力紛争」の状態にあると考えて差し支えない状態であるとの指摘もあり平時では決してありえません。

 

米国による有志連合軍の結成
米国はこの戦略的な手詰まり状態の解消するため、中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するため、同盟国の軍などと有志連合の結成をめざす方針を表明しました。
それが米中央軍が主導する軍事作戦「オペレーション・センチネル」です。
この作戦は同盟国が艦船等を派遣し、アラビア湾,ホルムズ海峡,バーブ・アル・マンデフ海峡,オマーン湾の公海の航行の安全を確保することを目的とします。

 

「オペレーション・センチネル」は一見、警察活動であるように見えますが、脅威の対象は、イラン、もしくはイランに同調する近隣の勢力であって、決して、海賊などの非国家主体ではありません。
新聞等でも報じられているように、米国には、イラン包囲網を形成して、さらなる圧力をかける意図があると考えられます。
つまり、有志連合軍の活動は純粋な「警察活動」でなく、「軍事活動」の側面を持っており、活動の一環として「武力行使」をする可能性も否定できないのではないでしょうか。

 

元々、有志連合とは、国連安保理事会決議のお墨付きの無い多国籍軍を意味しますが、1980年の政府統一見解で「目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと」されていますので、こうした有志連合に参加することは、武力行使の一体化の危険性があり、国際法上も、紛争当事者に加わることを意味します。

 

ホルムズ海峡調査とイラン等との関係
菅官房長官は「活動の地理的範囲については、オマーン湾・アラビア海北部の公海及びバブ・エル・マンデブ海峡東側の公海を中心に検討していく」と話していて、河野防衛大臣も10月24日の衆院安全保障委員会で、ホルムズ海峡も活動範囲から排除せず検討を進めていく考えを示しました。

 

これは、公海部分が無いホルムズ海峡で軍艦が「調査・研究」活動を行うことはできるのか?という国際法の問題があります。
なぜならばイランないしはオマーンの領海を通過せざるを得ない場合、実は「沿岸国の防衛又は安全を害する情報収集を目的とする行為」は国際法上、領海における無害航行違反行為の問題を持つからです。

 

自衛隊派遣の問題
今回の自衛隊派遣の一番の問題は、こうした状況下の地域に、民間船舶の航行の安全確保を目的とした警察活動を行う前提で自衛隊艦艇等を派遣するとしながら、そうした活動は、イランと軍事的に対立する米国と軍事戦略の一環として行われてしまうのではないか、ということです。

 

我が国の自衛隊艦艇等が中東で活動する前提は非軍事の警察活動であって、憲法9条で禁止された武力行使を前提とした有志連合軍には参加できないわけですから、憲法上、我が国は、米国やイランのいずれの側にも加担しない中立の立場を維持する必要があります。

 

ところが、政府は「米国提案の「海洋安全保障イニシアティブ」には参加せず、日本独自の取組を適切に行っていく」と言いながら、「引き続き米国とは緊密に連携していく」としています。

 

米国との緊密な連携には、自衛隊による米艦等の防護、自衛隊と米軍との間で弾薬等の物資や役務を融通しあうACSA協定を活用した米軍への後方支援、軍事情報の提供等が含まれるかどうかも不明です。

 

警察活動を行なっている自衛艦等がそうした活動を行うことは、実質的に「重要影響事態」を前提とした後方支援活動と何が違うのでしょうか。実質的な軍事活動ではないかとなる可能性があります。

 

また、独自派遣された護衛艦等は、活動中、ジブチ以外でも補給を受けることになると考えられますが、これは有志連合参加国が使用する同じ補給基地を使うことになるのでしょうか。
そうなれば、一体化につながるきっかけになることも大いにあるのではないかということです。

 

そもそも、自衛隊法に規定されている「海上警備行動」は、あくまでも海上保安庁による警察権行使の延長線上で行われるもので、国際法上も非軍事の警察活動に当たると考えられます。

 

かつて、海賊行為から我が国関係船舶を守るため海上自衛隊の護衛艦を派遣したとき、当初、「海上警備行動」を根拠にした訳ですが、それは、海賊行為が非国家主体の行う不法行為であって、それを取り締まるのも警察行為に当たると言う理屈でした。

 

しかし、今回、わが国が関係する船舶が海上交通を脅かされるという事態の背景には、米国とイランの間の一触即発の軍事的緊張があるので、船舶等への攻撃には、国家主体が直接、間接に関与している可能性が極めて高いと考えられます。

 

自衛隊派遣の合憲性は、軍事作戦の側面から警察活動をいかに切り離して、実施できるかにかかっていますが、イランとの間で緊張が走らないで、ペルシャ湾やホルムズ海峡等の軍事的な緊張状態にある地域に自衛艦等を投入することが現実に出来るのでしょうか。

 

どこから弾が飛んできてもおかしく無い地域に、国際法上の軍艦をわざわざ投入することは、平和憲法を踏まえた判断とは到底思えません。
有事や平時の際には既にルールが存在しています。

 

しかし、今回は有事と平時の間にある中東への派遣という極めて曖昧な法制です。
派遣は憲法のみならず、国際法を遵守することが肝要だと考えますので、現場で汗を流されている自衛隊員の皆さんのためにも間違った方向に行かぬよう、今後も引き続き議論させていただきたいと思います。

 

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衆議院議員 しのはら豪(立憲民主党、神奈川1区)
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