「予算委員会質疑」ご報告(新型コロナウィルス集団感染に係る日本政府の対応について/2月25日)

国会・国政

 

予算委員会で再び質疑をさせていただきましたのでご報告させていただきます。
内容は「新型コロナウィルス集団感染に係る日本政府の対応」についてです。

 

2月3日以来、横浜港の大黒ふ頭に停泊しているクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」において新型コロナウィルスの集団感染が発生し、5日以降、連日、乗客乗員の感染が広がり続けました。

 

1月25日に香港で下船した乗客が新型コロナウィルスの感染者だったことから、3日の帰港後に検疫を開始した結果、5日に10名の感染が判明、以後、乗客・乗員に19日までの個室待機を求めます。
5日までの間に、感染が広がっていることが分かったわけですから、当初、感染拡大を抑制するため、乗客乗員の接触を断つことは妥当だったと考えます。

 

しかしその後、船内から毎日感染が増え続け、感染拡大の抑止・ストップはうまくいきませんでした。
また、すでに多くの専門家から、政府の説明には説得力がないとの疑問の声があがっていました。

 

にもかかわらず、政府は乗客の健康観察期間(14日)が過ぎたとして、発熱などの症状が無くPCR検査で陰性だった乗客を19日以降下船させ、下船後は公共交通機関などを利用しても差し支えないとして、帰宅させてしまったのです。

 

この施策は明らかな失敗ですし、その裏には政府の誤った対応・認識があったと思います。
そして本日、政府から新たな対応策(基本方針)が発表されましたが、このダイヤモンド・プリンセスでの認識と対応そのままに、今度は日本全土をダイヤモンド・プリンセス号にしてしまう過ちを犯してしまうのではないか?
国民の皆さんがそのように心配しているわけです。
特に寄港地となった横浜市民の不安は大変大きなものとなっています。

 

そこで、地元横浜を拠点とする衆議院議員として、質問をさせていただきました。

 

●個室待機で感染防止はできたのか?
まず、ダイヤモンド・プリンセスでの対応の失敗には、政府の認識の甘さがあったと考えます。

 

5日以降の検査で感染が確認された乗客について、加藤厚労相は記者会見(15日)で「いずれも5日より前に感染した」との見解を示しました。
菅官房長官も、記者会見(20日午前)で「隔離は有効に行われてきている」と述べ、あくまでも、5日以降の感染拡大はないとの主張を変えていません。

 

そこで今日この時点でこのような事態(※陰性とされて下船した乗客から陽性反応)を起こしているのですが、政府の判断は今でも正しかったと考えているか?と加藤厚労大臣に質問しました。
その答えは「あの時点では仕方がなかった。適切だった」というものでした。
あくまでも対応・判断の過ちは認めない、というスタンスです。

 

●専門家、外国政府等の批判にどのように答えるのか?
中島一敏 大東文化大教授(感染症学。WHOで感染症対策の専門官を経験)は「感染拡大していなければ感染者の数は減るのが自然。直前になってこれだけの感染者がみつかっているのに、14日間で新たな感染が起こっていないというのは疑問」と述べています。

 

米政府は当初、「自室に留まることが最も安全な選択肢」として日本政府の対応を支持しました。
しかし、さすがに連日何十名もの感染者が発見されるようになると、クルーズ船内で待機中に感染したと判断したと思われ、15日にはチャーター機を手配、17日に328人を米国に退避させています。

 

また、アメリカ疾病対策センター(CDC)は18日、日本政府の検疫は「公衆衛生上の効果はあったが、船内で感染を防ぐには不十分だった」と評価し、下船した全ての乗員乗客について少なくとも14日間は米国への渡航を認めないと発表しました。

 

米国以外の政府もすべて、船内隔離は失敗したことを前提に対応を行っていると報じられています。
しかし政府は、こうした専門家や外国政府の判断については評価をさけ、見なかったことにしています。

 

●事後的調査の必要性
世界保健機関(WHO)の緊急対策責任者マイク・ライアン氏は18日、「船内で予想以上に感染が広がっていたことは明らかだ」とした上で、「何が船内での感染につながったのか、調査することが非常に重要だ」と語り、事後的な調査が重要との認識を示しています。

 

政府はこうした意見を真摯に受け止め、調査に協力する、あるいは、WHOにも協力を求め自ら調査を行うことが大変重要だと私は考えます。
「その意思はあるか?」と問いましたが、答弁は非常に歯切れが悪く、調査されると何か困ることでもあるのではないか?と思わせるようなものでした。

 

●船内における乗員の状況
クルーズ船の入港時、乗客乗員3711人の内、乗員は1045人、乗客に匹敵する数を占めていました。
そして乗客は、5日以降、各室に隔離された状態にありましたが、乗員が寝泊りする部屋は相部屋で、トイレや浴室も共同で使用、食事についても食堂で他の乗員と一緒にしていたと報じられています。
また乗員は、手袋やマスクといった簡単な対策しかとらずに、1)検査で陽性が確認された人の誘導を行い、2)客室を回り、配膳などで乗客に接することを繰り返していた、とされています。

 

乗客として乗っていた米国人のアーノルド・ホプランド医師(75)の船室には、多いときで1日に10回も、食事や必需品、励ましのチョコレートなどを持った乗組員がやってきたと述べています。

 

また、乗客がマスクもせずにバルコニーで洗濯物を干したり、バルコニー越しに身を乗り出して隣室の乗客とおしゃべりする姿もあった、と政府も答えているのですが、それでも「隔離が適切に行われていた」と強弁するわけです。

 

●政府職員等の感染の意味
12日には、男性検疫官1人の感染が判明しました。
この検疫官は2日間、マスクと手袋のみで乗客らの体温測定や質問票の回収にあたったとされています。

 

●本省職員の感染
そして20日に、厚労省と内閣官房の職員さんの感染が確認されたのです。
この2名は、乗客とは切り離され「安全なエリア」とされていた事務室で、40代の職員さんと共に3人で仕事をしていたとのことです。

 

●政務三役の装備
目撃情報によれば、
14日には本省からの国家公務員と思われる5名が8時27分に全く装備なしのまま入船。
厚労省の大坪審議官は、17日午後、マスクのみでクルーズ船に乗船。
東京ナンバーの黒塗りのハイヤーにのった政府職員は、マスクすらせずに乗船。

 

また、現地対応に当たる橋本厚労副大臣も、20日に船内写真を投稿するなどしていますが、やはりマスクのみで歩き回っていたとのこと。
これらを見ても、政府の「危機管理意識」は、あり得ないほどに低いレベルにあったと言わざるを得ません。

 

●下船するときの作業者の防護基準を明確にしなかった問題
また、2月19日に乗客が下船する際に作業を行う港湾関係者が防護装備を自ら準備していたところ、国土交通省担当者から「マスク程度にしてほしい」との要望があったことも判明しています。

 

加藤厚生労働大臣に対しては「作業員に対してマスク程度にしてほしいという要望は適切だったと思うか? 適切と言うならばその根拠は何か?」と聞きましたが「マスクで大丈夫」という答弁が返って来るのみでした。

 

●下船は間違い
5日以降も感染拡大が続いていた可能性が否定できなくなった以上、19日から21日まで続いた乗客の下船と公共交通機関の利用は、感染を一気に市中に拡大させる危険性が高いと考えます。

 

帰宅すれば、交通機関でもうつし、家族にもうつし、その家族が学校や会社に行き・・・感染を一気に拡散する危険性がありますが、政府はこの想定を否定してきました。
そして帰宅した乗客のPCR検査を直ちに実施する予定もありません。

 

このことを改めて加藤大臣に問いましたが、私の質問が「データに基づいていない」との答弁がありました。
そこで早速データを示し、加藤大臣の指摘があたらないことも、きちんと述べさせていただきました。

 

すでに21日、オーストラリア政府は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から下船し帰国した乗客2人からウィルスの陽性反応が出たと発表しています。
この人はクルーズ船で検査した際には陰性で症状も認められなかったそうです。

 

その他、24日までの間に、英国で4人、イスラエルで1人、香港で2人の乗客が帰国後に感染していることが確認されました。
これらの「事実」が全てを物語っているのです。

 

22日には遂に同様の事例が国内からも出ました。
船内の検査で陰性と判断され下船した栃木県内の60代の女性の感染が確認されたのです。

 

このように陰性とされた下船者の感染が相次ぐ事態になっていますが、政府は、それでもなお船内隔離が適切だったと強弁し続けるのでしょうか?
失策なのは明々白々であるのに、それを一切認めない。その態度はやはり大きな問題だと言わざるを得ません。

 

●重症化しやすい高齢者の扱い
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客2666人の内、46%が70歳以上とされています。
とすれば、そもそも長期間の船内隔離を一律に強制することは、現実的ではなかった、危険であった、と言えます。

 

政府の方針も実は二転三転しています。
2月14日からは、経過観察期間としていた19日を待たずに下船させる方針へ転じ、80歳以上の方で、
1)船内で窓のない部屋、窓はあっても開閉できない部屋で生活されている方
2)基礎疾患などを抱えている方
について、本人が希望する場合には、新型コロナウィルス検査を実施し、陰性が確認され、本人が下船を希望するのであれば下船させ、潜伏期間が解消するまでの間、政府が用意する宿泊施設において過ごしていただくこととしました。
これにより、2月16日までに207人が入院、17日までに55人が宿泊施設へ移動しました。

 

そもそもこうした対応が早期に行われていれば、感染がここまで拡大することは無かったのではないかと考えます。

 

●クルーズ船 PCR検査の不作為
厚労省は、当初、1日当たり約300件という検査能力の限界から全員一斉の検査は見送っていましたが、2月15日には民間検査機関などに協力を要請し目処が立ったとして、全乗客をウィルス検査する方針を発表しました。
なぜ、当初から民間検査機関などを総動員しようとしなかったのでしょうか?

 

イタリアや韓国は、万単位の検査を行っているのに、なぜ日本では1日3830件止まりなのでしょうか?
・地方の衛生研究所 1800件
・民間検査の5社 900件
・検疫所 580件
・国立感染症研究所 400件
・大学 150件
で、午前中の質疑では現在までにどれだけの検査がされたのかも判っていないとのことでした。

 

この日の報道でも、ほとんどの自治体が直ちに国に報告していると言っています。
国のHPでは、18日には9人、19日には61人、20日には90人しかしていないとされています。
しかし和歌山県だけでも、18日に48人、19日に44人、20日に66人の報告をしていると報じられています。

 

●検査の保険適用
このような中、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が24日に公表した見解でも、
「PCR検査は、現状では、新型コロナウイルスを検出できる唯一の検査法であり、必要とされる場合に適切に実施する必要があります。」としながら「心配だからといってすぐに医療機関を受診しないで下さい。」「特に、風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。」とあります。

 

私は、PCR検査の保険適用を準備すべきと考え、いつその体制が整うのかと質問させていただきました。
また、ぜひ早期に実現してほしい、明日にでもやってもらいたいとお願いし検討していただくことになりました。

 

軽症者を医療機関から遠ざけて、重傷者を救えるキャパシティを保つという考え方は、政府は、感染拡大の防止を諦めたということを意味します。
専門家会議は、「これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」との認識を示しています。

 

●コロナウィルスと横浜港
最後に、「ダイヤモンド・プリンセス号」の件で、クルーズ船が感染者を出すと大変な事態になることは、誰もが肝に命じたにもかかわらず、世界一周クルーズに出ようとしている船がありました。
最終的に断念されたことには敬意を表しますが、週末まで出航にこだわった状況がありました。

 

合わせて2000人が乗るクルーズ船は、出航した後に一人でも感染者を出したら、第二のダイヤモンド・プリンセス号になります。
そうなれば、今度は、どの港も受け入れてくれなくなります。
ですから国交省は、クルーズ船に関してダイヤモンド・プリンセス号の二の舞いとならぬよう、少なくとも出航前に取り止めるよう勧告すべきだったと思います。

 

ダイヤモンド・プリンセス号の一件以来、国交省の今後の方針が全く見えて来ていません。
厚労省ほかの省庁と連携しながら、今後のクルーズ船の運行などに対して早急に方針を策定すべきです。

 

地元横浜の住民の方々は、感染した大型クルーズ船の受け入れはダイヤモンド・プリンセス号だけでもう充分だと言っています。
当然でしょう。
今回は民間会社が決定を撤回して中止としましたが、未だ、国交省港湾局・産業港湾課(クルーズ担当)から基本方針は、出ておりません。

 

望むらくは、今回の件をうけて、クルーズ事業に関する対応方針と事業者への指導をしていただきたい、そう要望し、結びとさせていただきました。

 

●最後に
今回の質疑の結果も非常に残念なものだったと感じています。
引き続きしっかりと対応し、疑問点を質してまいります。皆さまからのご指導よろしくお願いいたします。